第21話 ひばりとナイトメア−A
「感動の再会は出来たかい?」
室内の空気がうねり始め、ひばりたちの前にラプチャーが姿を現す。
「ラ、ラプチャー……出たわね」
アリカはその存在感に気圧されながらもラプチャーをにらみつける。
「あんた、メアに何してくれてんの?」
ひばりも震える声で怒りを堪えながらラプチャーと対峙する。
「何をしたかと聞かれても困るな。余はメアを汚らわしい人間界から取り返し、余と同じ高級娼婦へと育てたいだけだ」
「妹を男に売り飛ばす気なの!?」
「売り飛ばすとは失礼な。人間とは違い、サキュバスにとって男と交わることはとても誉のある行為なのだ。普通の悪魔でいうところの契約に等しい。魔界ではより多くの契約を得たものが偉いのだよ」
「倫理観が違い過ぎてあたしたちには理解出来ないね。とにかく、メアを早く元に戻して。あたしはこの子を人間界に連れて帰るんだ」
「連れて帰る……メアの故郷はこの魔界だ。その表現はおかしいのではないか? それに、メアは余の魔術で人間界にいた頃の記憶を消している。その状態で人間界に連れて行っても元には戻らないぞ」
「ラプチャー様……お言葉ですが、旦那様と奥様はナイトメアお嬢様の人間界留学についてはお許しを出しております。ひばり様たちにも一理あると思いますが」
「ペガサス、貴様はその小娘共に味方をするのか? 貴様の主人はこの余であろう?」
「私は乙女の味方です。あなた様のようなビッチの下僕となったつもりは初めからありませんが」
「「「…………」」」
ひばり、アリカ、そしてラプチャーはペガサスに対して冷たい視線で一瞥する。
「……ふっ、ペガサスが余を裏切ったところでどうということはない。メアはすでに余の手中にあるのだからな」
「どうすれば元に戻せるのよ!」
「そんなもの、方法は簡単だ。キスをしてやればいい。ただし、キスはキスでも、『王子様』のキスだがな」
「王子様ぁ? サキュバスのくせに何をメルヘンなこと言ってんのよ」
「王子様とは彼女にとって大切な人という意味だ」
「ふーん。それって、男じゃないと駄目なの? まあ、ものは試しなんどけどさ」
そう言って、ひばりは迷うことなくメアと唇を合わせるのだった。
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