第20話 アスモデウス邸と門番−B
「止めて! それ以上ひばりを傷つけるのは私が許さないわ!」
ひばりとペガサスの間にアリカが叫びながら割り込む。
「アリカ……何してんの……」
「あなたも馬に蹴られて死にたいのですか?」
ひばりとペガサスはそれぞれ言葉を投げかけるがアリカは一歩も動かない。
「この馬野郎! さっきからひばりを売女売女って――この娘はこんな見た目だけど処女なのよ!」
「この状況で何言い出すんだ」
ひばりはアリカの発言に突っ込みを入れる。
「処女……それは事実ですか?」
しかし、ペガサスはそれを聞いた途端に狼狽える。
「こいつ、どうしちゃったワケ?」
「処女という言葉に反応したわね」
「お二人方、少々失礼を……」
ペガサスがひばりとアリカに近寄って彼女たちの髪の匂いを嗅ぎ始める。
「わっ! 何するのよこのスケベ馬!」
「確かにこの匂いは……処女!」
ペガサスは二人が処女だと確信すると、二人に対して頭を垂れた。
「大変申し訳ございませんでした!」
「何だ、こいつ……」
「とても邪な気配を感じるわ」
「私は紳士として、処女に対して優しくありたいのです。先程は大変失礼なことをいたしました。大丈夫ですか? 怪我はしておりませんか? 膜は破れておりませんか?」
ペガサスがひばりに手を差し出すが、ひばりとアリカはドン引きしていた。
「あ、実は私、匂いを嗅げば処女かどうかわかる特技を持っているんです」
「ろくでもない特技ね。でも、大人しく通してくれるのはありがたいわ。ついでだけど、メアのところに案内してもらえる?」
「ええ! よろこんで! さあ、私の背中に跨ってください! ご足労をおかけする訳には参りませんからね!」
「それは遠慮するわ」
「そうですか。残ね……いえ、かしこまりました!」
ペガサスはひばりたちの仲間になった。
✕ ✕ ✕
「ここがナイトメアお嬢様のお部屋でございます」
静まり返った広い屋敷の奥にある一つの部屋に案内されたひばりはアリカが見守る中、メアの部屋の扉を開けた。
メアの部屋は桃色の家具で統一されており、調度品は全て最高級のものとなっている。
肝心のメアは天蓋のついたベッドの上で虚ろな表情をしながら座っていた。
「「メア!」」
ひばりとアリカはメアに駆け寄る。
「…………あなたたちは誰ですか?」
しかし、メアは二人を見て、表情を変えず、そんなことを言うのだった。
「メア? あんた、あたしのことがわからないのか?」
「わたくしはあなたのような者を知りません」
「冗談はよしなよ。あたしは夜鷹ひばりだよ」
「聞いたこともない名前ですね。御用がなければお帰り願います」
「…………ッ!」
ひばりは唇を噛みしめる。
せっかく魔界まで来たというのに、メアはひばりたちのことをすっかり忘れている様子だった。
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