第19話 アスモデウス邸と門番−A

 メアの実家であるアスモデウス邸の門前にひばりとアリカは到着する。


「大きいわね。まるでお城みたい……」

「呼び鈴を鳴らしても簡単には入れてくれない雰囲気を感じるかな」


「当然ですとも! よくぞいらっしゃいました、そこのお嬢さん方!」


 ひばりたちは謎の声に驚く。

 すると、アスモデウス邸の塀を飛び越えて、一本角が生えた白馬のケンタウロス男が現れた。


「私の名はペガサス! このアスモデウス邸の門を守護するユニコーンのケンタウロスです!」

「矛盾の塊みたいな謎生物が現れたんだけど……」

「顔はかっこいいけどクセの強い見た目をしているわね」

「アスモデウス邸に何の御用ですかな?」

「メア――ナイトメアはここに来ているかしら?」

「ナイトメアお嬢様でしたら、数時間前にラプチャー様とこのお屋敷に戻られましたよ」


 ペガサスは意外なほどにあっさりと答える。


「やっぱりここにいるのね! 私たちはメアに用があるの。通してくれない?」

「ふむ。私は門番である故、身元のわからない者を簡単にはお通しする訳にはいかないのですが、アポイントメントは取っていますか?」

「今から取らせてもらうよ」


 ひばりはそう言ってペガサスに蹴りかかる。

 ペガサスは咄嗟に腕をクロスして蹴りを防いだ。


「ちょっと! まずは交渉をしましょう!」


 アリカはひばりを諌めようとするが、蹴りを食らわせてからではもう遅い。


「おやおや、乱暴なお客様ですね。……まあ、どの道、あなただけは通す訳にはいかないと思っていましたがね!」


 ペガサスがひばりを指差して蔑むような目で言い放つ。


「アリカ、ちょい下がってな。この男はあたしが力尽くでねじ伏せるから」

「売女で更に暴力的とは、救いようのないメス犬です」

「誰が売女だよ」


 ひばりは殴る蹴るの暴行でペガサスに襲いかかるが、女子高生離れした身体能力を持つひばりでもペガサスに攻撃を全て受け止められ、反撃の後ろ足蹴りで吹き飛ばされ、塀に叩きつけられてしまった。


「そんな……ひばりが負けるなんて……」


 幼い頃から人一倍喧嘩に強く、その力で姉や妹を守ってきたひばりの敗北にアリカは開いた口が塞がらなくなる。


「あなたのように品のない女は馬に蹴られて死んでしまいなさい」


 ペガサスはすでに相手を蹴っておきながら、そんなことを言うのだった。


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