第16話 ひばりと幼馴染−B
「きっと、これから私たちはあられもない姿にされてひばり先輩からあの本に載せられているような行為の数々を要求されるに違いありません」
「くっ、ひばりなんかに百合乱暴をされるくらいなら舌を噛んで死んでやるわ」
「いや、そんなことしないから、てか、営業妨害なんだけど」
コンビニの休憩室に連れ込まれたメアとアリカは喚くが、ひばりは呆れた顔で一蹴した。
「あんたいつも帰ってないじゃない! いかがわしいバイトしていないか心配で見に来てあげたのよ!」
「全国のコンビニ店員に謝りなよ」
「申し訳ありません先輩。サキュバスは牛乳を見ると本能的に飲みたくなってしまうので牛乳だけでも売ってください」
「牛乳はいいけどこっちの本は没収ね」
ひばりがエロ本の端を指で摘んでメアから取り上げる。
「そ、そんな汚いものみたいに扱っては駄目ですよ! それは命の創造を人々に指南する神聖な書物なのですから!」
「……マジで?」
ため息を吐いたひばりは二人を店の外に放り出す。
「もう二度とバイトの邪魔するなよ〜」
そう言って彼女はバイトに戻ってしまった。
「む〜。何よ、せっかく心配してあげたのに!」
「先輩、わたくしたちよりもアルバイトの方が大事のでしょうか?」
「あのバイトバカのことだからあり得なくはないけど、ちょっと悔しいわね」
アリカが寂しげな表情でそう呟いた直後、急に空が曇り始めた。
ゴロゴロと雷が鳴り出し、メアは空から強い魔力を感じ取る。
「どうしたの?」
「いえ、なんだか嫌な予感がして……この魔力、もしかして姉さまが……」
曇り空から妖艶な見た目の女性が一人現れて、メアとアリカのいるコンビニの駐車場に降り立つ。
「この人がメアのお姉さん!? すごく破廉恥な格好をしているわよ!?」
女性はマイクロビキニのような格好にマントだけを羽織っており、露出魔として通報されそうな際どい姿をしていた。
「おやおや、こんなところにいたのかい。探したよ、我が妹よ」
メアの姉は見えない力でメアを引き寄せ、腕の中に捕まえる。
「きゃあっ!」
「メア!? いきなり何をしているのよ!」
「簡単なこと。家を飛び出した妹を連れ戻しに来たのだよ」
「姉さま……お父さまにはきちんと許可をいただいたはずですが……」
「それはお父さまの許可だろう? 余は許可など出しておらんよ。だから、お前を魔界に連れて帰る」
刹那、訳もわからずそのやり取りを眺めていたアリカの脇を黒い影が走り抜け、何者かがメアの姉にドロップキックを食らわせた。
「あたしの後輩に何してくれているのよ!」
「先輩!」
コンビニの制服を着たまま、異変に気づいたひばりはメアを助けようとメアの姉に立ち向かう。
「ただの人間が攻撃したくらいで余の肌は傷つかん」
メアの姉はメアを捕まえた状態で霧を纏い姿を消していく。
「だが、勇気だけは褒めてやろう。余の名はラプチャー。アスモデウス家の長女にして魔界の最高級娼婦だ。メアを取り戻したくば魔界に来てみるがいい」
ラプチャーは完全に消えてしまい、ひばりたちだけが残された。
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