面接を間違えた…

「失礼します。」


俺は面接を受けるかのように用意された椅子を出し、前に立つ。


「これは面接ではないから畏まらなくていいさ。君の合格は既に決まっている。」


それにしては面接会場のような教室なんだけどなと俺は思った。机と椅子の配置がいかにも緊張感を生んでいる。畏まらなくていいと言われたので普通に座ることにした。


「我が高校へようこそ。私は君の担任を受け持つ事になる明日見差夜(あすみさや)だ。明日見先生でも差夜先生でも呼び方は君に任せるよ。」

「えっと、この面談というのは。」

「最初にあってどんな生徒か知りたいという理由でやっているんだ。交通費なら請求してくれて構わないぞ。政府が払ってくれるからな。」


正直この高校に来るのは一苦労だった。中学は家から近い為電車を使うことは無かったが、この高校は遠い。しかも駅は人が多い。ぶつからないように避けるだけで必死である。避け切れずに触れてしまった時はその場から逃げるなどして何とか来れた。帰りは何時になるのだろうか。あまり遅くなると会社帰りの電車に乗ることになりそうだ。


「自分は能力以外は至って普通です。」

「まあそうだろうな。私も異能者だから普通でいたい気持は分かるぞ。」

「えっ。」

「話の流れで言ってしまったが、私も君と同じ異能者さ。まぁ触れた相手や物の情報を知るという能力だけどな。この特別科は、先生も含めて全員異能者だ。2年、3年の先生も異能者だぞ。」


こんな美人教師が異能者だって事に俺は驚いた。本人には言えないがこの先生はかなりスタイルがいい。先生じゃなくてモデルとかやってみてはどうだろうか。いや、異能のせいでそういった仕事には支障が出るか。先生という仕事にも支障ありそうだけど。


「君は異能が邪魔だって思った事あるか。」


「どういうことですか。」


先生の質問に俺は違和感を感じた。今まで俺に触れた者は全員気持ちよくなっていたのに本当に快楽を与える異能だと思うかいと先生は聞いてくる。これが快楽を与える異能でなければなんだって言うんだ。


「いや、ちょっと不自然な事に気づいたんだ。君のお母さんは生きているんだよね。」

「はい、植物状態ですが。」

「君は自分のせいでお母さんがそうなってしまったと思っているかい。」

「少しですが。これの何処が不自然なんですか。異能自体不自然ではありますが。」

「君の言う通り異能は不自然だ。でも物理法則は通用する。」

「何が言いたいのですか。」


俺のお母さんはもしかしたら俺の異能で倒れてしまったのかも知れないと思ったことはあった。だけど、先生の言う不自然とは一体何なんだ。異能以外の不自然って。


「今は、まだ話す時では、なさそうだな。」


先生は笑みを浮かべながら言った。先生は一体何を不自然に思ったのだろうか。今言う時ではないと言うことはそのうち言ってくれるのだろう。先生の笑みが不気味だったのでこれ以上聞くのを止めて話題を変えた。


「この教室緊張感漂うっていうか…。」

「この教室は面接会場として使っていたんだ。片付けないでそのままにしていた所を私が借りた。まあ君やあと4人の生徒との面談のためにな。その他の生徒は私の利用している教室で面談を行っている。まあ触れたらなにか起こるような異能は触れないようにしないと行けないからな。この面接会場は、生徒との距離感が丁度いいから使っているんだ。」


確かにこの距離ならうっかり触ることは無いが、それにしても面接会場を面談の場に使うのはどうかなと思う。面接でも無いのに緊張してしまう。面と向き合って話し合うには不向きだ。


「緊張しているのか?場所が場所だから無理もないが、気楽にしたまえ。そうだな職員室にジュースがあったか。持ってくるから少し待っててくれ。」


そういうと、俺を残して先生は教室から出ていってしまった。この場で1人取り残されるってなんか不吉な感じしかしないんだけどなと思った。暫くすると先生は戻ってきた。手に持っていたのは炭酸系のペットボトルのジュースだった。


「これしか無かったから済まないが許してくれ。」

「べ、別にいいですよ。」


炭酸系のペットボトルを受け取ると俺は開けて少し飲んだ。シュワって感じが少し緊張を解いてくれた。先生は面接官が座ってそうな場所に戻って座る。


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俺は何処かでやり方を間違えた キサト @Killmessiah

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