没個性

小学校で先生が出欠をとっている。


「出席をとります。『足立』……『漆黒ブラック』さん。」


「はい。」


「『磯村』……『真心ピュア』さん。」


「はい!」


「『上田』……『瑠偉ルイ』さん。」


「はい。」


先生はどんどん生徒の名前を読み上げる。


「『滝川 ヒロシ』さん。」


「プッ!」


ある生徒が噴き出してしまった。


「こら!笑ってはいけません!」


「ハッハッハ!なんだよヒロシって!お前だけ普通の名前じゃん!」


「……。」


「みんな個性あるのにお前だけ個性ないじゃん!」


「……。」


「しかもお前だけすぐ呼ばれたじゃん!他のみんなは時間かかってたのに!」


「こら!やめなさい!」


ここは遠い遠い、何百年も先の未来。


一時期、全国でキラキラネームが流行し、爆発的に増えた時期があった。


それからは名前は個性とみなされ、公序良俗に反しない範囲で許容されるようになった。


しかし、逆に今まで使われていた名前への風当たりが強くなったという問題を抱えることとなった。







「ってことがあるかもしれないから、今のうちに個性的な名前を付けた方がいいと思うんだ。というわけでこの子の名前は『雲母キララ』にするっていうのは――」


「ダメに決まってるでしょ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る