ハロウィンの怪物

 窓の外の賑わいを眺める。

 目に入ってきたのはゴミの山と羽目を外して暴れる愚か者。

 この時期になると毎年ニュースになる。


 僕はハロウィンが嫌いだ。


 仮装行列に並ぶ怪物たちを尻目に仕事に戻る。

 さっさと終わらせてしまおう。


 デスクに向かうと、上司の話し声が聞こえてきた。


「ええ、はい。申し訳ございません。ええ、今後ともよろしくお願いいたします。失礼いたします」


 いつも笑顔の上司が電話を切り、こちらに向かって歩いてくる。


 そう、客先だけには笑顔の――


「なぁ、お前客先で何やらかした?」

「え、何って――何でしょうか?」

「そんなこと自分で考えろ! そこがわかんねぇからいつまでたっても駄目なんだよ!」


 ハロウィンが嫌いと言ったが、ハロウィンの雰囲気自体は嫌いではない。


 ハロウィンにしか現れない期間限定のキャラクターがいたり、食べ物があったり、イベントがあったり、特別な気分が味わえるからだ。


 嫌いなのは――


「わかってんの? 今日も残業だからな? おい、聞いてんのか!」


 いつもの説教に耳を傷めながらふと窓の外を見る。


 外の怪物たちは一日でいなくなるからまだかわいいものだと思った。


 目の前の怪物がいなくなる日は来るのだろうか……

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