5-2 ENDmarker.果たされなかった願い

「まま」


 抱き上げた、子供。震えている。


「ぱぱが」


 この子は、泣いたことがない。


「ぱぱが。まま。ぱぱがっ」


 それが、いま。泣き出した。


「ぼく。ごめんなさい。ぼくが。ぼくが海に。しのうとしたから。ぱぱが」


 子供のその言葉で、わたしは、それを理解した。


 病院の窓。


 海は見えない。


 彼の、安らかな顔。まるで、眠っているみたいに穏やか。


「ぱぱ」


 泣き続ける、子供。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る