5-1

 病室。


 横たわった、彼。


 あの窓辺で、見知らぬ子供が溺れそうになっていたのを、彼は助けた。そして、子供は助かり、彼は、意識が戻らなかった。


 子供の親は見つからず、そして、助けられた子供は。わたしと彼の子供だと、彼がそう言えと、救助された後に伝えてきた。


 見知らぬ子供が海に入って死のうとしたのを、彼は身を呈して助けた。そして、沈み行く意識のなかで、死のうとしていた子供に養子縁組を組んだ。


「ぱぱ」


 子供が、彼のところに走り寄っていく。


 彼の身体を、手で触って。


 動かないことを確認して。


 立ち尽くす。


「おいで」


 子供。わたしのところへ、とぼとぼ歩いてくる。


「まま」


 子供を、抱え上げた。

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