04

「ぱぱ」


 子供は、横になったものを見ると、そう呼ぶ。そして、手で触れて、それが動くかどうか、確認する。動かないと分かると、興味を失って、別なことをはじめる。


 それだけが、この子の、唯一の遊びだった。それ以外は、わたしを心配させまいと、ひっしに生きている。子供とは思えないほどに、日常をこなしていく。


 わたしは。この窓辺から。もう、動けなくなっていた。


 日に日に、自分の心から血が流れ出していくのを、感じる。傷がついた精神は、もう、二度と戻らないほどに、血を流した。かきむしっても、えぐりとっても、心は、なにも言わず。涙だけがこぼれる。


 限界がきた。


 子供を呼んで、抱え上げる。


「ぱぱのところに、一緒に行こっか」

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