幸福なる中毒者

 全人類平等。

 平和で健康。

 いさかいも争いも無く、病気も怪我もない。

 帰属性を一にして同等の幸福を享受きょうじゅし、不幸と言うものが存在しない。

 そんな、全知全能の神が作り上げた、最上の安息があったとしよう。

 果たしてそこで暮らす者と、生涯効果が切れることのない麻薬を浴びた者とを比較したとき、いったいどれほどの違いがあると言えるのであろうか。

 はたから見たときの彼らはどちらも哀れで滑稽な落伍者らくごしゃ

 己から見たときの彼らはどちらも絶対の幸福者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る