第9話

松戸駅に着くと、ねるがキョロキョロとしていた。まぁ病院からほとんど出たことないから松戸駅でも都会に見えるのか。俺には東京の劣化番にしか見えないが。


「すごい!何か都会って感じがする」


「東京はもっとすごいがな。空気は美味しくないが。それより結界どんくらい強力なんだ?」


「中にいる人以外は生きてる人間でも入れないくらいだよ」


めちゃくちゃ強力じゃん。生きてる人間は大抵の結界を通ることができる。それは生きてるからだ。肉体を持っている人間は霊的なものはほとんど効かない。だがまれに強力な術を使う奴は生きてる人間にも影響を及ぼす。


「そうか、それなら安心だ。生きてる人間にも俺の歌が聞かれないならなおさらだな」


「音痴なの?」


「音痴じゃないが、俺の歌う歌はアニソンとアイドル曲が多いんだよ。だから他人からしたらなにこいつノリノリで自分で合いの手をいれて歌っているのキモいと思われるだよ。ていうか実際きた店員にそいう顔をされた」


マジでなにあいつアイドルソングなんかを躍りながら歌ってるの?キモいなという顔をされた。だが仕方ないだろう。アイドルソングを聞くと自然に体が動くんだから。


「私はむしろのりのりでのるよ」


へぇーそれは楽しみだ。アニソンも歌うからそれものってくれるといいんだが。俺は合いの手をとかを他人が歌ってるときはいれる。まぁ今まで一人としかカラオケは行ったことないが。だがあいつは俺に集まる幽霊をほぼナンパしてるからほとんど歌わなかった。俺は見られるのはいやですぐに出たな。あいつはもちろんナンパは失敗した。


「さてついたな、ここがカラオケマックだ。50%オフの件があるからこれを使う」


「へぇーカラオケにも割引とかあるんだね」


「ああ、結構あったりするぞ。まあ行くか」


俺達はカラオケマックにはいると、受付の人が可愛い人で俺は吃りながら部屋番号の書いた紙をもらった。ちなみにねるは俺の横で爆笑していた。後で俺の絶対許さないノートに書いてやる。


俺達は部屋に入ると複数の視線を感じたが、ねるが結界の呪文と印を結ぶと視線は感じなくなった。さすがだな。この結界は俺の親父の結界にも匹敵する。


「さて歌うか、最初はアンビバレント歌うか」


「あ、それ知ってるよ。私もアイドルに憧れてた時あるからそれなりに知っているんだー」


「じゃー合いの手頼むわ」


俺は曲をいれて歌い始めた。


「アンビバレントアバウト、アンビバレントアバウト、アンビバレントトアバウト!」


俺は曲を躍りながら歌う。そのためにわざと少し広い部屋にしてもらったのだ。しかも店員は来ないし思いっきり歌える。歌うと楽しくなってきたな。


するとねるが合いの手をいれてくれる。ふとねるを見ると楽しそうに目を細めた笑顔になっていた。楽しんでくれたように何よりだ。やっぱり一人で来るより誰かと来たほうが楽しい。しかも一人分のお金ではいれるから最高だ。歌い終ると、ねるがぱちぱちと拍手をした。


「最高かよ。特にダンスがキレキレだったね」


ふっ家で斉さんになにやってるこいつという顔をされながらも自分の部屋で完璧になるまで練習したからな。10曲ぐらいならダンスは踊れる。


「じゃー次は私だね。今さらだけどここって監視カメラ付いてるの?」


「付いてないから思いっきり歌っても問題ないぞ」


「それじゃーこれにしよっと音楽室に片想い」


この曲は二人のユニットが歌ってる曲だ。いまいちなにかが足りないように感じたが最後のピースがねるの可能性もある。ねるの声質的にあっている曲だしな。ねるの声を聞いたときこの曲なら合うんじゃないかと思っていた。


「音楽室に片想い♪」


ああやっぱいいわ。思わず癒されてしまう。萌え声で癒しボイスとか最高だ。ねるが櫻坂二杯ったら人気になるだろうなぁー。って俺は幽霊になに萌えているんだ。相手は可愛くても幽霊だぞ。でもたまには幽霊の歌声もいいな。もし監視カメラがあったら声だけ聞こえてホラーだな。


「どうだった?」


「下手だったら笑おうが思っていたが、それができなくて残念だ」


「遠回しに誉めてるの?まるで八幡のような褒め方だね」


俺の青春ラブコメは間違っているを知っているのかよ。知らないと思ってこの言い回しを使ったが、知っているなら恥ずかしい。だってアニメの台詞をいうなんて痛い奴だと思われるだろう。俺はとりあえず採点をいれ忘れたのでいれた。


「次はライジングホープだ。握ったメッセージザッツライジンクホープ」


この歌は疾走感があって好きなのだ。深雪のことをどんなことがあっても守るって感じが伝わってきてな。俺もそこまで守りたい奴ができるだろうか。できれば専業主夫にしてくれる人がいい。


歌い終ると俺は点数を見た。86点か微妙な点数だな。まぁカラオケは久々だしこんなもんか。それにしても知らない奴に見られないで歌うのってこんなに快適なんだな。


「ライジングホープだね。私は魔法科高校の劣等生を見たことあるよ。入院中は暇だったから勉強と本読むこととアニメ見ることしかなかったし」


てことは結構ねると話し合ったりするのか。だが幽霊だあまり仲良くなりすぎると離れるときに離れたくなってしまう。だから必要以上に仲良くしないようにしなくては。


俺はそう思いながらねるの次の二人セゾンを聞き始めた。












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