第300話 リンゴとメロン
「なんだかあっちはやる気だけど?」
「まぁ、折角だしやるなら勝ちてぇな」
「じゃぁ頑張ろう! 私も足手まといにならないように頑張るよ!」
「どっちかっていうと俺が足を引っ張りそうだな……」
最上の言葉で高城もやる気だ。
練習の時は結構息も合っていたし大丈夫だとは思うが……。
「まぁ純粋に最上達の方が足が早かったら負けるな」
「うーん、私そんなに足早くないんだよね」
「俺もだ。走る行為が基本嫌いだからな」
息は合っていても足が遅くてダメそうだな……。
まぁ、一生懸命やることが大切だよな?
てか最近じゃ本気で走った事なんて無いし、ちゃんと準備運動しておこう。
そんな事を考えているとあっという間に競技が始まった。
俺たちはスタートレーンに集まり、放送席の実況担当の生徒がルール解説を始める。
『それではこれから始まる二人三脚のルールを説明します! ルールは簡単! 二人の足を縛って100メートルのコースを完走する! それだけです!』
「本当にシンプルだな」
「わかりやすいね」
『なお! 我が校ではおなじみになりましたが二人三脚には男女混合のペアも存在します! そのペアのみ男性が女性をお姫様抱っこで走る事が可能です!』
「いや、最早二人三脚じゃねーじゃん!」
「そ、そんなルールあるんだ……」
『もちろん、人一人を抱きかかえて走るのは大変なためかなりの体力を使います、なのでお姫様抱っこをするかどうかは各々の判断に任せます!』
「いや、そんな目立つこと女子側が嫌だろ……」
「え? あぁ……わ、私は別にその……良いかなって……」
うわぁ……俺のパートナー結構乗り気だ……。
てか、お姫様抱っこで走るなんて軽く公開処刑だろ!
高城には悪いけど俺は絶対そんな真似はしないぞ!
「ふふ、流石はうちの高校……変わったルールがあるよね?」
「また最上か、お前いい加減突然現れるのやめろ」
「もちろん君もお姫様抱っこで行くだろ?」
「なんでだよ」
突然やってきた最上は小柄な女性を連れていた。
恐らく最上のパートナーの加藤さんだろう。
大人しそうだがなかなか可愛い。
「丁度僕たちは同じレーンだ! 君もお姫様抱っこで掛かってくるがいい!」
「お前、正々堂々とか言っておきながらそれは無いだろ?」
「む? なぜだ?」
だってさぁ……言っちゃ悪いけど抱っこするお姫様の体格に差があるだろ?
例えるならあっちはあっちはリンゴでコッチはメロンみたいな……いや、別にあれだよ?
ある特定の部位の話しをしているわけじゃないよ?
ただわかりやすく例えるとそう言う感じなんだよ?
まぁ、絶対に口に出しはしないけど。
「まぁ気にするな、俺はお姫様抱っこをする気はな……」
「え……」
おい、高城なんでそんな絶望した目をするんだ?
だって普通に練習したじゃん!
ここでお姫様抱っこしたら練習の意味ないじゃん!
そして最上、お前もそんながっかりした顔すんな!
「前橋! ここは俺の顔に免じて頼む!」
「お前の顔を立てる意味がわからんのだが?」
「夏休みにホテルに泊めてやったろ!」
「お前そこでそれを出すのは卑怯だろ……」
「なぁ頼むよ! ここまで来て普通の二人三脚じゃ面白くないだろ?」
「普通に二人三脚で良いと思うのは俺だけなのか?」
そんな事を話しているうちに俺達の順番が来てしまった。
「えーっとどうしますか? お姫様抱っこですか? それとも普通に二人三脚ですか?」
係の生徒が俺と最上達に走り方を尋ねてきた。
俺は普通に走りますと言おうとしたのだが……。
「お姫様抱っこで!」
「お姫様抱っこだ!」
「お姫様抱っこでお願いします」
「えぇ……」
俺以外の三人が声を揃えてそう言ってしまった。
マジかよ……俺、メロン抱えて走るの?
しかも二つ……いや、何がとは言わないけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます