第298話 まさかのお題
そういう借りものもあるのか……。
こんなん公開処刑だろ!
さっきの井宮ゴールでクラスの奴らの視線が俺に向かって来てるんだけど!?
てか、教師達も良くこんなの許可したな……。
「はぁ、緊張するな」
「次は神影か頑張れよ」
「うん、なんとか最下位にならないように頑張るよ」
神影はそう言ってスタート位置についた。
スタートの合図と共に一斉に走り出し、神影は4番目に借りる物が掛かれたクジを引く。
「えっと……あ!」
一瞬驚き神影はそのまま俺の方にやってきた。
また俺?
なんだ?
今度は何て書いてあったんだ?
「ごめん前橋君、良いかな?」
「良いけど、何て書いてあったんだ?」
「尊敬する人って書いてあったから」
「いやいや、俺以外にも居るだろ?」
「ううん、君しかいないよ」
そんな話をしながら俺と神影はゴールに向かう。
尊敬する人に俺を選ぶなんて神影は何を考えているんだか……ちょっと嬉しいけど。
なんて事を考えていると自軍からまたしても視線を感じた。
「あ……」
視線の主は神影の彼女である菊川だった。
なんて言うんだろう……なんか視線だけでも俺を殺せそうな感じだった。
俺、この競技終わったら陣地戻れないかも……。
「はい、じゃぁゴールです」
「ありがとう前橋君」
「おう、じゃ俺は戻るわ」
まさか競技に出る前に二回も競技に参加することになるなんて、てか次俺の番だけどまだゴールしてないのもちらほら居るな。
「すいません、彼女居ないんですけどそう言う時は?」
「作って下さい」
「いや無茶言うな!」
なんか随分可哀想な参加者も居るようだな。
さて、俺は何を借りることになるのやら。
帽子とか鞄とか普通の物が良いんだけど……。
「はい、それでは位置について……よーい!」
バーン!
という音と共に俺はスタートした。
現在の順位は二位。
まずまずの順位だ、さて借りる物は……。
『結婚を考えている女性』
俺の試行が停止した。
「はぁ!?」
その後でようやく脳の処理が追いつき俺は声を上げた。
ふざけるな!
こんなもんどうしろってんだよ!
この場で公開告白するようなもんだぞ!
マジでふざけんなよ!
「くそっ! どうする?」
結婚どころかコッチは付き合うかどうかで悩んでるんだよ!
畜生、このままだと俺は借りもの競争が終わることが出来ない。
現に今も井宮と一緒にスタートした男子は彼女を探している。
「すいません! 付き合って下さい! 今だけ彼女に……」
「は? 無理」
「ちくしょぉぉお!!」
あぁはなりたくない。
どうする?
考えろ!
考えるんだ!
結婚だろ?
そりゃあ井宮も高城も結婚相手としては今のところ申し分ない……ってそうじゃない!
ここでこの二人のどちらかを選んだら、それはもう俺が答えを出してのと一緒だ!
くそっ!
なんとかこの状況を打開する方法は……。
「圭司! どうした! 借りものはなんなんだ?」
「もしかしたらお母さん持ってるかもよぉ!」
「けいちゃん! お姉ちゃんの力が居るの? 必要なの?」
えぇい!
こんな時にうちの家族はうるさ………。
「そうか!」
俺は親父の顔を見てある事を思いついた。
俺は直ぐに目当ての人物の元に急いだ。
「先生!」
「え? 前橋君? どうしたの?」
「先生が必要なんです!」
「え!? あ、あぁ借り物競争で教師って書いてあった?」
「すいません、急ぐんです」
俺は善岡先生にそう言ってゴールに向かった。
「はい、それでは紙を見せて下さい」
「お願いします」
そう言って借り物が書いてる紙をゴール前に居る生徒に見せる俺。
生徒は紙と連れてきた先生を見て驚いていた。
「え!?」
「どうなんだ?」
「えっと……結婚を考えている女性ですね」
「あぁ、そうだ」
そう係の生徒が言った瞬間、先生を含めたグランド中の人間全員が声を上げた。
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」
まぁ、そりゃそうだ。
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