第297話 借り物競争

『続いての競技は借りもの競争です、選手の皆さんは準備をお願いします』


「次は借りもの競争かさて次は誰が出るんだ?」


「何言ってるのよアンタでしょ?」


「え? あ、そっか」


 そう言えば出場種目は勝手に決めてくれっていったんだった。

 

「てか井宮、なんでお前までついて来るんだ?」


「私も出るからよ、馬鹿言ってないで行くわよ」


「あ、そう」


 そんな話をしながら俺と井宮はスタート位置に向かう。


「あれ? 神影もか?」


「うん、僕あんまり運動得意じゃないからこう言うトリッキーなので軍に貢献しようと思って」


「別に軍への貢献なんて考えずに気楽に行こうぜ、俺も別に一位なんて目指してねぇし」


「アンタは少しやる気出しなさい」


「あいて」


 井宮から軽く頭を叩かれる。

 そんな事を言われてもやる気なんて出るわけない。


「あ! けいちゃーん! 頑張ってぇ~!!」


「圭司! 頑張れよぉー」


「一位を取るのよぉー!」


 なんか家族全員で応援までしてるし……そのせいでめっちゃ目立つし。

 もう帰りたい……。


「はぁ……帰りたい」


「アンタの家族凄いわね」


「マジで帰って欲しい」


 そんな事を話しているうちに競技はスタートした。

 借りもの競争はスタートして直ぐに箱から紙を一枚取り出しそこに書いてる物を借りてきてゴールするというものだ。

 既に第一走者達はスタートして各々借りる物を探している。


「おーい! 誰かイヤホン持ってないか!」


「誰かアクセサリー貸してくれ!」


 うちの学校にしては普通の物ばかりだな。

 なんかとんでもない物を借りて来いって指示されるのかと思ったけど、これなら安心だ。

 なんて思っていた俺だったが……。


「おい! なんだ夢と希望って! んなもんどうやって借りるんだよ!」


「おいコラ運営! なんで女子のスク水なんて入れてんだよ! これはアウトだろ!!」


 あ、やっぱりうちの学校だ……。

 どうやらヤバイやつと普通のやつが混ざっているらしい。

 普通のやつを引かないとこれはゴールすらできないな。


『えぇ、借りもの競争の走者は何時間掛かろうとその物を持ってきてください。ゴールするまで他の競技には出れません』


「なんだその鬼畜ルール!!」


「流石うちの学校って感じね」


「僕、なんか不安になってきた」


 第二走者以降の選手に不安が走る。

 そりゃそうだ、普通の競技だと思ったら全然普通じゃねぇんだもん。


『なお、借りもの競争は借りた物にも特典が付きます。難しいお題ほどポイントが高いと思ってください。なお借りものは必ずこの学校の敷地内にあります』


「夢と希望なんてどうやって証明すんだよ」


 実況に一人でツッコミを入れていると井宮の番が来た。


「はぁ、なんか憂鬱なんだけど」


「井宮ガンバ」


「アンタ応援する気ないでしょ?」


「井宮さん頑張って!」


「神影君ありがと、言って来るわ」


 なんで俺と神影でここまで対応が違うんだ……。

 井宮がスタート位置につき直ぐにスタートの合図が鳴った。

 井宮は二番目に箱から紙を取り出しお題の書いてある紙を見ていた。


「なっ!?」


 井宮は紙を開いた瞬間に短く声を上げて固まった。

 一体何と書いてあったんだろうか?

 見る見る井宮の顔は赤くなり何故か俺の方にやってきた。

 え?

 何?

 一体お題は何なの?


「ちょっと来て」


「え? 何んだよ? 何って書いてあんだよ?」


「良いから来て!」


 井宮にそう言われ俺は井宮に付いて行く。

 早くしないと俺の番が来てしまうのだが?


「はい、お題を見せて下さい」


 ゴール前で待機している実行委員の生徒に井宮が自分が引いたお題の紙を渡す。


「えっと、好みの男性ですね! OKです!」


「ちょっ! なんで言うのよ!」


「規則なので」


 顔を真っ赤にして声を上げる井宮。

 そして、俺の顔も恐らく赤くなっていた。


「な、なんかありがとな」


「う、うっさいわよ! さっさと戻りなさいよ馬鹿!!」


 罵倒されたけど怒る気にはなれなかった。

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