第295話 体育祭です! 


 体育祭、それは学生たちがスポーツによって争い正々堂々と勝負をする一年に一度のスポーツの祭典。


「勝つぞぉぉぉお!!」


「「「うぉぉぉぉぉ」」」


 体育会系の奴らは勝利に燃え。


「暑い……」


「早く終わらないかな?」


 文化部の奴らはどうでも良いからさっさと終わってくれと願い。


「マジ勝つしか無いっしょ!」


「うぇーい!」


 リア充どもは学校行事を全力で楽しみ。


「おい、あいつ確か野球部の谷岡だよな?」


「あぁ、最近彼女が出来たらしい」


「よし! 事故と称して痛めつけてやろう!」


 うちのクラスの馬鹿共はモテるスポーツ男子に向かって危ない作戦を立てていた。

 てかこいつらにスポーツマンシップはないのか?


「来たな体育祭!」


「そうだなぁ、早く帰りたい」


 そう、今日は体育祭である。

 まったくなんで土曜日なのに学校に来なくては行けないんだか……。


「さて開会式も終わったし準備をするか」


「準備? 準備体操ならしただろ?」


「そうじゃねぇよ、ちゃんとバレないように武器を隠して持っておかねーとリア充共を痛めつけられないだろ?」


「とりあえずうちのクラスの男子にスポーツマンシップが無いことは分かった」


 なんでうちのクラスはこんな男子ばかりなのだろうか?

 まぁ、一部真面目というかまともなのも居るが……。


「お前ら少しは真面目に取り組めよ」


「そうだぜ! 体育祭なんて燃えるじゃないか! こんなに燃えたのは甲子園の土を踏んだ時以来だぜ!」


「八代、お前ら野球部は今年の地区予選二回戦敗退だろうが」


「夏休みに甲子園球場に行ってきたんだよ!」


「それは土を踏んだとは言わん」


 九条と八代は比較的体育祭を楽しんでいるようだった。

 まぁ、二人とも運動部だしな。

 女子は女子でやる気のある体育会系と文科系で綺麗に別れたな。


「うちの男子は頼りにならないから私達が頑張らないとね!」


「そうね、他のクラスのイケメンとこの体育祭を通して仲良くなるのよ!」


 どうやらうちのクラスの女子は同じクラスの男子を諦めているらしい。

 

「頑張ろうね圭司君」


「そうだな、それなりに頑張ろうぜ」


 俺にそう言ってくるのは体操着姿の高城だ。

 

「昔から圭司君って運動会とか好きじゃなかったよね?」


「まぁな、運動会ってなると自然と家族が応援にくるだろ?」


「そうだけど……何か関係あるの?」


「うちの家族は目立つから……」


「あぁ……」


 母親は今もなお駅前でナンパされるほどの美人、父親は社内で今でもモテまくるイケメン、姉は読者モデルでキャッチフレーズが最強の美少女。

 こんなのが応援に来て騒ぎにならないはずがない。

 一度小学校に親父達が来て大変なことになった。

 若かりし頃を思い出した奥様方に親父が色目を使われ、それに母さんがキレて運動会どころでは無かった。


「まぁ、トラウマがあるからな」


「じゃぁ今日は来ないの?」


「あぁ、絶対に来るなって言っておいた。てか仕事で多分来れないだろう……し?」


 そう言いながら客席を見るとそこにはなぜか人だかりが出来ていた。

 そしてその中心には俺に向かって手を振る夫婦が居た。


「あれ? あれってもしかして圭司君の……って圭司君?」


 俺は気が付くと客先に向かって走っていた。

 そして二人の元にやってきて一言。


「帰れ」


「いきなりだな息子よ」


「そうよ、折角来たのに」


「父さん母さん! あれほど来るなって言ったのに!!」


「仕事が一段落ついてな、母さんも来たいと言っていたし」


「忘れたのか! 父さんと母さんが来ると体育祭どころじゃなくなるんだよ!」


「何を言ってる。あれは偶然だ」


「そうよ、それに今回はそんな女が現れたら私がなんとかするわよ」


「そう言うことじゃねぇんだよ……」


 あれほど来るなと言ったのに……。

 まぁ、姉貴が来てないのが救いか。


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