第292話 拡散希望RT
*
「はーい、それでは撮影以上になります。お疲れ様でした!」
撮影が終わったのは午後三時頃だった。
岡島さんの話では結構スムーズに終わったらしい。
これでやっと帰れる。
「はぁ、疲れた」
「お疲れ様前橋君! どうだった? 初めての現場は?」
「とりあえず鯉でも見に行って見ようと思いました」
「え?」
岡島さんと合流しこの後の事を聞く。
この後は普通に帰って良いらしいのだが、岡島さんいわく大事な話があるらしいのでそのまま近くのファミレスに行くことになった。
川宮さんも今日はあと予定が無いので一緒に来るらしい
「前橋君」
「あ、どうもっす」
「今日はお疲れ様、また君と現場で会えると良いな」
「いや、俺は所詮素人なんで」
「そうかな? 君結構演技の才能あると思うよ」
「そうですかね?」
「あぁ、まぁまた会えたらよろしく。僕はこれから別の現場だから」
「はいっす、どうもお疲れ様でした」
井島さんは最後に俺に声を掛けてそのまま次の現場にマネージャーと向かっていった。
「やっぱり売れっ子は忙しいんだぁ」
「私たちも行きましょ」
「良いですけど、大事な話ってなんすか?」
「それは大事な話よ」
「だからその中身が知りたいんですけど……」
俺たちも撮影現場を後にして近くのファミレスに向かう。
岡島さんは自分のバイクを取りに駐車場に行っている。
川宮さんは俺の顔をチラチラ見ては顔を反らしていた。
全く話もしないのでなんだか気まずい。
いつもなえらどうでも良い話しをしてくれるんだが……。。
やっぱりあのセリフのせいかな?
まぁこの状況であのセリフは色々思うところあるだろうな。
「川宮さん」
「え? あ、どどどどどうしたの?」
「いや、あの……すいませんなんか今日のあのセリフ」
沈黙に耐えられなくなり俺は川宮さんに思わずセリフの事を言ってしまった。
「べ、べべべべ別になななななんとも思ってないよ!」
「思いっきり気にしてるじゃないっすか……」
さっきまであんなに見事な演技をしてたのに今は噛みまくりである。
「わ、私は別に気にしてないけど……圭司君は気にしたんじゃない? なんたって私みたいな100年に一人の美少女にあんな事を言ったんだから!」
「顔真っ赤っすよ」
「う、うるさい年上の上げ足をとらないの!」
「いや、事実を言ったまでです」
やっぱりめっちゃ気にしてるようだ。
「お待たせ、それじゃぁ行きましょうか」
「ほ、ほら! 行くわよ圭司君!」
「誤魔化してんじゃないっすか」
「誤魔化してません! 全く! 今度私を虐めたらSNSで圭司君にいじめられたって実名と写真を晒すから!」
「何て酷いことを」
絶対に川宮さんをいじめるのはやめようと思った。
ファミレスは撮影現場から少し歩いた所にあった。
中に入り席に座るなり岡島さんと川宮さんは二人で俺にこう言ってきた。
「単刀直入に言うわ。このままうちと契約続けて」
「お断りします」
「はやっ! 圭司君はやっ!」
「いや、前から言ってるじゃないですか。俺は芸能界に興味とかないんです」
「今日の撮影見て確信したのよ! 貴方はきっと俳優になるべくして生まれてきたのよ! お願いこのままうち契約して!」
何となくそんな予想は出来た。
しかし、いくら言われても俺は芸能界に入る気はない。
良くしてくれた岡島さんには悪いがこれだけは変えられない。
「悪いんですけど、やっぱり俺こう言う仕事は向かないと思いますし……」
「くっ! それならSNSに圭司君が女の子をナチュラルにたらし込む危険人物って実名と写真付きで拡散するわ!」
「好きだなその脅迫。普通に嫌ですよ」
流行ってるのかな?
普通に嫌だしめっちゃ困るからやめて欲しい。
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