第287話 女の闘い

「え? ちょとまって、俺らの軍の名前ってそんな馬鹿みたいな名前なの?」


「あぁ、そうだぞ。お前話聞いてなかったのか?」


「まぁ……」


「うちの学校の軍の名前は毎年モチーフがあって、今年は果物なんだと。それで俺らがリンゴで最上たちの軍がバナナってこと」


「普通は青軍とか赤軍とかだろ……なんか余計に体育祭に出たくなくなったわ」


「ちなみにもう一つの軍はドリアだ」


「なんで急にそんなマイナーな果物なんだよ」


「ドリア軍の軍団長が決めたらしいぞ?」


「なぜみんな止めなかったんだ……」


 そんな話しをしながら俺達はグランドに集まった。

 夏が終わったと言ってもまだまだ暑い日は続く、こんな炎天下の中で運動を強要するなんてこの国は間違ってる!!


「あちぃ……」


 体育祭の流れを一通り行い、それが終わったら軍事に集会。

 終わる頃には俺はもうくたくたで教室で着替えもせずに突っ伏していた。


「しんどいわ……」


「何疲れ切ってんのよ、ほらタオル」


「え? あぁ、さんきゅ……」


 そう言いながらタオルを差し出してくれたのは井宮だった。


「ん、なんか良い匂いする」


「まぁ、使ってないやつだったから……柔軟剤の匂いじゃない?」


「え? お前は良いのか? て言っても使っちまったけど……」


「良いわよ別に他に持ってきてるから」


「あぁ、そうか? なら良いけど……ってお前今日はポニテなんだな」


 タオルを返そうとして井宮を見ると、井宮は長い髪を後ろで束ねていた。


「まぁ、体育の時とかいつもこうだし……変?」


「いや、なんか新鮮だなって思ってよ、いいじゃん」


「そ、そう?」


「あぁ、結構好きだぜ」


「ん……あ、あっそ! た、たまにはプライベートでもしてみようかしら……」


 井宮はそう言いながら自分の髪を弄っていた。

 髪型が違うだけでこんなに印象違うんだぁ……汗のせいもあってちょっとエロく見えることは言わないでおこ。


「俺達インドア派にはしんどいイベントだわな」


「そう言いながらアンタ今日の持久走一年で三番に入ってたじゃない。女子がキャーキャー言ってた」


「たかが三位だろ? 一位は最上だし、二位はモテたくて必死になった英司だぞ?」


「笹原君は女子をエロい目で見てて逆の意味でキャーキャー言われてたわ」


 血走った目で体操服の女子を凝視するからだろうな……。


「まぁ、変に力抜いて本気で勝とうとして奴の邪魔をするのは嫌だからな。オンラインプレイでもあるだろ? 報酬目当てに何もしない奴」


「あぁ、要るわね。何もしないくせに報酬だけ持っていくのよ」


「俺はそんな奴と一緒になりたくない。なので体育祭も出るなら八割くらい本気でやる」


「アンタらしいわね……ねぇ、一緒帰らない? てか私の家こない? この前買ったゲームやろうよ」


「お! お前も進めたか? 実は俺も今結構良いところでだな……」


 なんて話をしていると、今度は体操着姿の高城がやって来た。


「あ、椿ちゃん。早く着替えいこうよ」


「ゆ、優菜……さ、先に行ってても良いわよ?」


「もう何言ってるの? 着替えないと汗臭いままだよ?」


「く、臭くないわよ!」


「ほら、早く行こ!」


「あ! 優菜、アンタ狙って来たわね!」


「抜け駆けはさせないよぉ~」


「うぅ……ちょっと前橋! アンタ教室で待ってなさいよ!」


「え? お、おう……」


「圭司君、着替えてくるから待っててね」


「優菜、アンタまた一緒に来る気ね……」


「当たり前でしょ? 椿ちゃんは強敵だもん」


 二人はそう言いながら教室を出て更衣室に向かっていった。

 後半一体何の話をしていたのかいまいちよく分からないが、放課後はまた三人で帰ることになるのだろうか?


「……気まずいな」


 先帰ってちゃだめかな?


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