第284話 以前とは違う



 下校時間が俺は好きだ。

 学校という檻から解放され自由になる時間は素晴らしい。

 しかし、そんな素晴らしい放課後もこんな状況では楽しめない。


「椿ちゃん今日は何のゲーム買うの?」


「今日はねぇ……」


 俺は今、井宮と高城の二人と下校している。

 一見すれば美少女二人に囲まれて羨ましがる男も多いだろう。

 しかし、俺にとってこの状況は非情に気まずい。

 なぜなら、俺はこの二人に告白さて返事を断ったのだが、何故かもう少し考えてくれと説得され、ふわふわした感じの関係性だからだ。

 もうなんだよこれ……まるでギャルゲーじゃん。


「ちょっと前橋」


「え? どうした?」


「あんたさっきから何難しい顔してるのよ」


「具合でも悪いの?」


「い、いや別に……」


 この気まずい空気に耐えきれません。

 なんて言えるはずもない。

 告白の件があってからというもの俺はこの二人を学校では意識しまくりだ。

 井宮なんか気軽ゲームに誘えなくなってしまった。

 理由は気まずいからだ。


「どうせ昨日も夜中までゲームしてたんでしょ?」


「うふふ、あんまり夜更かしすると身体に悪いよ」


「あ、あぁ…そうだな」


 一件いつも通りの二人。

 しかし、確実に告白前と違うのは二人とも俺とのスキンシップを求めてくるようになったことだ。

 井宮なんか隙あらば俺の手を軽く握って来るし、高城に至ってはその大きな胸を押し付けてくる。

 正直俺も男なのでいろいろ大変なことになるのでやめて欲しい。


「そのゲームがお目当ての?」


「そうなんだぁ~ずっと楽しみにしてたの! 店舗特典が豪華でね!」


「私はあんまりゲームしないけど、面白そうだね」


「今度このソフトの前作貸してあげようか? それも面白いんだよ!」


「そうなんだ、じゃぁ貸してもらおうかな? 分からないことあったら教えてくれる?」


「うん、教える教える!」


「圭司君も教えてくれる?」


「え? あ……」


 おぉ……すごいな高城。

 この状況で俺に教わるという約束を取りつけてきた。

 井宮はゲームの話に夢中でその状況に気が付かなかったようで「しまった」みたいな顔した後に頬を膨らませてジト目で俺を見てくる。

 いや、貸すって言ったの自分じゃん。


「ま、前橋! 今夜は早速オンラインプレイよ! 夜明けておいてね!」


「え? あ、あぁ良いけど……」


 ここぞとばかりに俺と同じ趣味というアドバンテージを使ってきたな井宮……。

 まぁ、このゲームの売りはオンラインバトルだし、俺は全然良いのだが……今度は高城が無言の笑顔で俺を見てきてる……いや、ゲームは趣味なんですよ。

 好きなゲームソフトを買いにきたはずなのに、なんでこんなに疲れなくちゃいけないんだ……。


「無事買えた~さぁ帰って早速プレイね!」


「よかったね、それじゃぁ私と圭司君はコッチだから」


「ふえぇ!? あ、そ…そっか……じゃ、じゃぁ気をつけて」


 残念ながら俺と高城の家はゲームやのある駅から東側、井宮の家は西側なのでここでお別れだ。

 井宮はまたしてもジト目で俺を見ており、高城は俺の腕を引っ張って帰ろうとする。


「た、高城引っ張らないでくれ!」


「あぁ、ごめんね」


「いや、あの……手は?」


「え? 繋いでちゃだめ?」


 あざとい!

 この子はあざとい!

 本当にこの子があのぶーちゃんだったのか?

 可愛くなりすぎだろ!

 てか、元々好きだった子が美少女になるってそれもう完璧だろ!

 で、でも……。


「わ、悪い……そう言うのは他の奴に見られると大変だから」


「あ……そっか……ごめんね」


 やめろ!

 そんな悲し気な表情で俺を見ないでくれ!

 なんか悪いことしたみたいじゃないか!

 いや、これってもしかして悪いことか?

 もう何なんだよ!

 俺は一体誰を選べば良いんだよ!

 

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