第279話 夏休み明けの学校はマジで嫌
*
夏休みが終わった。
これからまた地獄の学校生活が始まる。
そして、俺にはかなり厄介な問題が残ってしまった。
「はぁ……」
井宮、高城、高ノ宮、そして川宮さん。
どうやら俺はこの四人から好意を持たれているらしい。
しかも川宮さんや高ノ宮に至っては断ったのに諦めないと言われてしまった。
俺はこれからどうしたら良いんだ……。
「はぁ……」
「あらどうしたの? ため息なんて吐いて、そんなに学校が嫌?」
「嫌だよ、めっちゃ行きたくねぇ」
夏休みが終わったというのに珍しく家にいる母親にそう言う。
「大人になったらそんな学生生活も楽しかったって、いい思い出になるものよ」
「あのクラスでそんな思い出作れるのか?」
年がら年中女子に飢えている男子、それを蔑むように見る女子達。
男子が女子と仲良くなるだけで裏切り者として扱われるようなクラスだ、良い思い出なんか出来るとは思えない。
「いや、母さんの言う通りだぞ。大人になるとあの頃の思い出が……いや、忘れたいな……」
「一体親父何があったんだ……」
「……母さんから事あるごとにドロップキックをくらわされた記憶が……」
「どんな青春過ごしてんだよ」
リビングで朝からコーヒーを楽しむ父さんが遠い目をしながらそんな話をする。
「うぅ……今日から待った学校だよぉ~。圭ちゃんとろくにいちゃいちゃ出来ないまま夏が終わっちゃったよぉ~」
「俺は姉貴とイチャイチャなんてごめんだ」
「お姉ちゃんがしたいの! 性的に!!」
「もっとダメだろ」
姉貴はいつも通りの平常運転。
いや、これが平常運転ってかなりヤバイけど。
もうこれで夜中まで起きて昼に起きるなんて生活が当分お預けだと思うと少し悲しい。
クラスの奴らとは久しぶりに合うが元気だろうか?
「……何考えてんだ俺?」
あれ?
俺何でどうでも良いクラスメイトが元気かなんて疑問に思ったんだ?
あんな奴らが夏に何があろうと俺には関係ない話しだろ。
というか、そんなことより高城と井宮だ。
今日からは学校で毎日顔を合わせることになる。
どう接して良いものか……それにあいつらは知ってるのか?
互いに同じ相手に好意を持っていることに。
「何も無ければいいが……」
そんな事を考えながら俺は学校に向かう。
日焼けをした生徒やなんだか夏休みでいろいろデビューした生徒。
そして極めつけは明らかに夏休みに付き合いましたというカップル。
一月学校に来ないだけでここまで変わるんだな。
周りの生徒を見ながらそんな事を考えてクラスに向かうと、一月ぶりのクラスの中は何故か静まりかえっていた。
不自然なくらいの静けさに俺は少々クラス内を不気味だと感じてしまう。
「お、おいなんだよこの空気?」
「あぁ、圭司か……大変な事件が起きた」
「大変な事件?」
俺は近くにいた英司にこのクラスの異様な静けさについて尋ねた、すると英司は深刻そうな表情で話を始める。
「一体何があったんだ?」
「聞いて驚け……うちのクラスに……」
「クラスに?」
「カップルが誕生した」
「あっそ、それより夏休みの課題って……」
「おい! なんでそんな反応薄いんだよ!」
「別に? 良いじゃんカップルくらい」
「良くない! ここはモテない男の巣窟なんだぞ! その中の男子があろうことか彼女を作るなんて許されないんだよ! だから皆、朝からそいつに嫉妬してどうやって痛い目に合わせるか考えているんだ」
「そうか、とりあえず俺は通報すれば良いのか?」
夏休み開けから俺のクラスの男子も平常運転のようだ。
しかしカップルか。
一体誰だろう?
九条は桜川さんと良い感じではあるらしいがまだ付き合ったとは聞いてないから別な奴らか?
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