第278話 彼は夢中になると周りが見えない
よし、これで化け物達から解放される!
そう考えながら俺は化け物二人の腕を振りほどいて井宮と英司の腕を掴む。
「行こうぜ」
そうだ、早くこの場から去ろう!
あの化け物共から離れよう!
さもないと俺はあの化け物共に何かを奪われてしまう気がする!!
なんて事を考えながら、俺はさっさとその場を後にした。
正直言ってしまうと二人が馬鹿にされたからというよりも、あの二人に対する恐怖心が強く、いつもはあんな強い感じの口調で言わないのだが、焦って怒った感じで言ってしまった。
声掛けたのはコッチだったからなんか悪い気もしたが、化け物共から逃げるにはこれしか無かったんだ。
しかし、そう簡単に逃げられるはずもなかった。
「待ちなさいよ!」
回り込まれてしまった。
こいつらしぶといぞ!!
くそっ!
逃げるのコマンドが効かないなんて!!
こうなったら戦うしかないのか?
でも俺のコマンド常に「いのちだいじに」で戦闘向きではない!
くそっ!
こうなったら英司に「がんがんいこうぜ」って感じでなんとかして貰うか?
いや、英司も今は俺と同じ「いのちだいじに」だ。
となると井宮に頼るか?
そう思って井宮の顔を見るが何やら頬を赤らめて上の空だ。
こいつどうしたんだ?
そうこう考えている間に化け物A・Bの攻撃!
「私達のどこが化け物なのよぉ~」
「しつれいしちゃうわぁ~」
「……一度病院に言った方が良いんじゃないか……」
「なんですって!?」
しまった!
俺がうっかり口を滑らしたことで化け物A・Bが怒り状態になってしまった!
このままでは全滅だ!
だが、一体どうすれば……。
そうだ!
俺が井宮を褒めちぎれば良いんだ!
こいつらはさっき井宮を否定していた、だったら逆に俺が井宮を肯定する発言をしまくって、好きなタイプが井宮のようなタイプだとこの化け物に錯覚させれば向こうも諦めるかもしれない!
「いや、正直俺こっちの井宮が可愛すぎてお前らが同じ人間なのかも分からなくなってきたわ」
「そこのブスのどこが可愛いのよ!」
「可愛いだろ? 足は長いし、瞳は大きいし、おまけに顔小さいし、多分世間一般で言っても可愛いよこいつは」
「私らの方が可愛いし~、アンタブス専?」
「俺がブス専だったら世の男性は多分ほとんどブス専だと思うが……悪いけどもう行くからな、アンタらと俺とじゃ価値観が違いすぎる」
「アンタおかしいんじゃないの!?」
「眼科に行ってもらいなよ! そうすればその子がどんだけ不細工か分かるから!」
「あー別に良いわ。もし井宮がマジで不細工だったとしても俺はこいつの性格が美人なの知ってるから。アンタら見たいな性格も不細工なのはごめんだよ」
俺はそう言って二人の手を無理やり引いてその場を後にした。
後ろではあの化け物共が何やらワーワー言っていたが完全に無視した。
てか、なんで俺がこんな事しなきゃいけないんだろ?
元はと言えば英司のせいなのに……。
「あーマジでやばかったぁ~」
「あ、あぁ本当だな」
「元はと言えばお前のせいだぞ!」
「わ、悪い」
化け物から離れられたことで俺は安心していた。
安心したせいか一気に緊張が溶け、俺は英司に向かってさっきの化け物の話をしていた。
「あいつら鏡見た事あるのかね? 井宮をブスだってよ? 馬鹿じゃねぇの?」
「そ、そうだな……」
「眼科に行くのはお前らの方だっての……って、あぁ悪い手引っ張ったままだったな」
俺はそう言って二人の手を離した。
そう言えば井宮は完全に俺たちに巻き込まれてあの化け物達に罵倒されたんだよな?
ちゃんと謝っておかないと……。
「悪かったな井宮、変なことにまきこ……どうした顔めっちゃ赤いけど?」
「……あ、アンタのせいよ馬鹿!!」
「え?」
「お前さぁ……少しは考えて言葉を発しろよ……コッチが恥ずかしかったわ」
「え? え?」
何故か井宮には真っ赤な顔で罵倒され、英司にはため息を吐かれてしまった。
あれ?
俺あの化け物からこいつらを助けたんだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます