第276話 人間見た目も少しは重要

 その後も英司は何度もトライした。


「ねぇねぇそこのお姉さん!」


「え?」


「俺達とお茶しない?」


「え? き、君と? い、良いわよ! さぁ行きましょう!」


「あれ? あの俺は?」


「え? あんた誰?」


 こんな感じで英司は一切相手にされていなかった。

 もういい加減諦めろよ。

 しかし、英司はいつになく諦めが悪い。

 よほど彼女が欲しいのだろう、俺を使って女を釣ろうとしている。

 ひかえ目に言って最悪だと思う。

 まぁだからだろうか、さっぱり女の子は引っかからないのだが。


「なぜだ!! なぜ失敗する!!」


「やり方が汚いからだろ?」


「くそっ! 顔だけは良いお前を使えば行けると思ったのに!」


「おぉなんだ? 喧嘩売ってるのか?」


「はぁ~あ……なんで俺ってモテないんだろ?」


「顔じゃね?」


「そう言う元も子もない事を言わない! そんなん知ってるわ! だからトーク術とかファッションとか、他のことで頑張ってるんだろ? お前見たいにただ立っているだけでモテる奴とは違うんだよ!」


「でも、それでもダメなら諦めろよ……それにどうせ来年も再来年も夏は来るし、これから文化祭にクリスマス、年末年始だってあるんだ、まだまだチャンスはあるだろ?」


「青春は短いんだ! 少しでも充実した毎日を送るためにも彼女は早急に作りたいんだよ!」


「そう言うもんか?」


「お前には分からねぇだろうな! てか贅沢だろ! なんでお前ばっかりモテるんだよ! しかも美少女に!」


「いや、俺に言われても……」


 そもそも俺もそのことに関しては悩んでいるし……それに当事者になって分かるけど、結構告白されるって精神的にも大変なんだぞ?

 まぁ、そんな事をこいつに言っても『それが羨ましいって言ってんだよ! なんだ自慢か?』とか言ってきて面倒そうだな。


「なぁ、なんで俺ってモテないんだろ?」


「男の俺に聞くなよ。てか人を餌に使ってる時点で正攻法じゃないんだからダメだろ? 俺抜きで一回ナンパして来てみろよ」


「そんなの絶対無理に決まってるだろ!」


「いや、まぁそうかもしれないけど、自分で行動するのと他人に頼るのは相手に与える印象が全然違うと思うし……」


「いや、それ以前に!」


「なんだ?」


「恥ずかしい……」


「急に!? さっきまでバンバン声掛けに言ってただろ!」


「いや、それはお前が隣に居たからだ。一人で女の子に声掛けるなんて絶対無理」


「今更何を言ってんだよ……」


 てかこいつナンパに向いてない気がする。

 その後、結局英司は一人で女の子に話し掛けることができず、俺を餌に使っての作戦を続行したが、良い結果は得られなかった。


「くそっ……」


「なぁ、もう帰ろうぜ」


「あと一回! あと一回だけ!!」


「はぁ……わかったよ」


「そ、それじゃぁ……よし、あの子にしよう!」


 最後の一回だけという約束をし、英司はターゲットを決めて声を掛けに行った。

 どうせ今回も失敗だろう。

 そんな事を考えながら俺は英司の元に向かった。

 女性の顔は良く見えないがまぁスタイルは良い子達だった。


「お、おねぇさん……良かったら俺達とお茶でもどうですか?」


 英司が声を掛け二人組の女の子がこちらに振り向いた。

 その瞬間、俺と英司は固まった。

 まぁ、英司も女の子を良く見て居なかったのだろう、振り向くまで顔見えなかったし、それにこの辺りは若い女の子が少ないし……でも……この二人はないだろ……。

 振り向いた女の子二人はお世辞にも可愛いとは言えない、それどころか振り向いた瞬間思わず声が出そうになるほどの衝撃的な顔をしていた。

 まぁ、要するに化け物だった。


「すいません間違いました」


 英司が顔を見た瞬間早口でそう言った。

 しかし……。

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