第275話 ガーン

「お前が欲しがっていたアニメの限定版ブルーレイボックスだ! しかも特典付き!!」


「お、おまえ……どうやってそれを? 確か抽選販売の限定版で限定200セットのはず……」


「ふふ、俺はお前以上のアニオタだぜ? 持ってないわけないだろ?」


「ま、まさかそんなレアな物を……」


「協力してくれたら、お前にこれを定価で売っても良い!」


「あ、そこは売るんだ」


「馬鹿野郎! 新品未開分はネットで売っても20万くらいするんだぞ! それが定価なんだからありがたく思え!」


 ウーム確かにそれは英司の言う通りだ。

 今ではこのブルーレイボックスはネットでかなりの高額で取引されている。

 新品未開封を定価なんて今なら奇跡に近い。

 正直購入出来るのであれば購入したい。

 でもナンパの手伝いか……。


「俺、ナンパなんてしたことねぇけど」


「大丈夫だ、お前は俺の隣に居るだけでいい、あとは俺がなんとかする、それに女の子と俺が上手く行ったらお前は帰って良い! てか帰れ!」


「失礼だな……まぁ、それでいいなら……」


 話とかそう言う面倒なことは全部英司がやるみたいだし大丈夫だろう。

 それに俺の現在の立場を考えて少し離れたところの街中でナンパをすることになった。

 近くの街でナンパなんかして高ノ宮とか川宮さんに見つかったらまずいしな……。

 

「よし! じゃぁ早速準備して行くぞ! ほらほら急げ急げ!!」


「あ、あぁ……」


 あまり乗り気ではなかったが俺は英司と共に隣町の街中まで向かった。

 ブルーレイボックスのためとはいえ、まさか俺がナンパをすることになるとは……。


「おい! 女の子がいっぱいだ!」


「そりゃ居るだろ」


「へへ、さて誰をナンパしようかなぁ~」


「お前、なんか性格変わってない?」


「仕方ねぇだろ! 彼女が出来なさ過ぎて少しおかしくなってるんだよ!」


「自覚はあるんだな……」


「それよりも流石だな」


「何がだ?」


「お前が歩くだけで女達の視線がお前に向く、やっぱりお前を連れて来たのは正解だったぜ」


「そうか? 何も感じないけど……」


 まぁそう言われると視線を感じるような気はする。

 

「よし! じゃぁ早速行動開始だ!」


「ブルーレイボックスの件忘れるなよ」


「分かってるよ! ヘイ! そこの彼女!」


 なんて古いナンパの仕方だ……。

 英司がまず始めに声を掛けたのは大人しそうな感じの子だった。

 黒髪ロングで青色のワンピースを来ている。

 正直井宮や川宮さんには負けるが可愛い子だ。


「はい?」


「あ、あの……よ、良かったら僕たちとお…お茶でもどうですか?」


 めっちゃ緊張してるぞこいつ。

 おいおい、さっきまでの勢いはどうした?

 本番になって緊張してきたのか?

 本当に大丈夫か?

 俺がそんな事を考えながら英司を見ているとその子は俺と英司を見てこう言った。


「うーん、君と二人なら良いよ」


「え? 俺?」


 そう言って女の子は俺を指さした。


「え!? 俺は!?」


「うーん……ごめんね」


「がーん……」


 ガーンって口でいう奴始めてみた……。

 今回の目的はあくまでも英司のナンパなのでこの子のお誘いは丁重にお断りして俺達は次のターゲットを探し始めた。


「畜生! あの清楚系ビッチめ!」


「すげー偏見だな」


「いや、きっとそうだ! なんだよ、二人で居るのになんで俺だけ排除しようとしてんだよ!」


「お前は女の子と良い感じになったら俺を排除するんだろ?」


「それはそれだ! くそっ! 次行くぞ! きっと一人だったからダメなんだ! こっちと同じ二人組なら!!」


「果たしてそうかねぇ……」


 まぁ、ある程度やって上手く行かなかった諦めるだろう。

 俺はそう思っていた。

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