第274話 彼女が欲しい!!

「まぁ、それはそれだ。それで何の用だ? 何もないなら帰れ」


「お前酷すぎないか?」


「そんなことは無い」


「夏休みももう終わりなんだぞ! それなのに……それなのに俺はやり残した事ばかりだ!」


「宿題の話か? 写させてやるからさっさと帰れ」


「違う!」


「え? 終わってるの?」


 いつも夏休みギリギリに俺を頼ってくる英司が?


「いや、それもあるが」


「終わってねぇのかよ」


「そんなことよりも重要な事なんだ!」


「もう夏休み終了まで三日だけどな」


「最終日に写させてくれ」


「嫌だ」


「まぁ、この話は最終日にじっくりしよう」


 最終日に泣きつく気だぞこいつ……。


「てか、さっさと本題を言えよ、俺はゲームで忙しい」


「出来てないんだよ! 俺に美少女の彼女が!!」


「あっそ、さっさと帰れ」


 そう言って俺は英司を部屋から追い出そうとする。

 しかし、英司も負けじと俺の部屋に戻ろうとする。


「待て待て! お前はいいさ! モテモテだもんな! モテすぎて困ってるもんな! でも俺は違うんだよ!」


「何がだよ」


「モテないんだよ!!」


「………」


 自分で言ってて悲しくならないのだろうか?

 あ、英司の目から涙が……悲しくなるなら言わなきゃ良いのに……。


「うぅ……なんで俺、モテないんだろ……」


「顔じゃね?」


「身も蓋もない事を言うな!」


「大丈夫だって、男は外見じゃない中身だ」


「顔の事を言ってからそんなん言われても説得力ねぇんだよ!」


「諦めろ、お前を好きになるのは相当な物好きだ」


「なんで俺に彼女が出来ない事がほぼ確定してるんだよ!」


「顔がな……」


「結局顔かよ! テメェの顔も不細工にしてやろうか? あぁ?」


 やばい、ちょっと言い過ぎたな。

 さっさと帰って欲しいけどこの分じゃ帰りそうにもないない。

 仕方ない、少し付き合ってさっさとゲームを再開することにしよう。


「はぁ、それでお前は何がしたいんだよ?」


「よく聞いてくれた! 圭司! ナンパに行こう!」


「は?」


「ナンパだ!」


 笑顔でそう言う英司。

 俺は直ぐにスマホを取り出してとある場所に電話を掛ける。


「あ、もしもし救急車一台、場所は……」


「おい! なんで救急車!?」


「いや、明らかに頭に異常が……」


「ねぇよ! なんだよ! そこまで俺がナンパしようぜって言うのが異常事態なのかよ!」


「もちろんだ」


「おいやめろその真っすぐな視線。嘘じゃないのが嫌でも分かる」


「大体ナンパなんて成功するわけねぇだろ? さっきの顔の話忘れたか?」


「嫌でも忘れねぇよ」


「だったらなんでナンパするなんて流れになるんだよ」


「そのためのお前だ!」


「は?」


「お前を餌にして女を釣り、すかさず俺がその女をかっさらう! お前はただ女を釣ってくればいい! どうだ? いい案だろ?」


 英司がクズみたいな作戦を立ててることだけはわかった。

 てか、頼んでる相手を餌扱いしてる時点で色々言いたいことはある。


「よし、帰れ」


「なぁ頼むよぉ~協力してくれよぉ~友達だろぉ~」


「都合の良い時だけそういう事を言うな、第一俺の状況知ってるだろ? そんな俺が街でナンパの片棒を担いでみろ? 多分誰かが俺を殺しにくるぞ……」


「お前ってそんな危険な女子から好かれてるんだっけ?」


 少なくとも姉貴は殺しに来るだろうな……ナンパ相手を……。


「という訳で、俺は付き合えない。他を当たれ」


「頼むよぉ~九条には断られちまったんだ」


「当たり前だ」


 てか九条にまでそんな頼みをしてたのかよ。


「仕方ない……あまりこの手は使いたく無かったが……」


「そ、それは!!」


 俺は英司がそう言って背後から出してきた物を見て思わず声を上げた。

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