第272話 グットモーニング

「お、おい……」


「別に直ぐに答えなんて出さなくて良いわ……でも私は本気だから」


 井宮はそう言って俺から離れ、タブレットに目を向ける。

 

「やめよ、今はこの話」


「あ、あぁ……」


「でも、そう言うことだからちゃんと考えておいて」


「あぁ……分かった」


 今の俺にはそうしか言えなかった。

 正直まだ誰が好きとかそう言うのは分からない。

 でも、俺は考えてしまう。

 俺に告白してきた4人の女子との出会いで俺は自分が変わってきていることに気が付いている。

 俺にとってこの四人は今や大切な存在だ。

 だから簡単に関係を切るわけにはいかなくなっているのだ。

 それからなんだか変な空気になってしまい俺達の会話は減った。

 二人ともそんな空気を忘れるようにゲームに熱中した。

 そして気が付くと二人そろって寝落ちしていた。

 

「ん……寝てたのか」


 気が付くともう辺りは明るくなり始めていた。

 俺は井宮から借りたノーパソをローテーブルに置いて床に座ってプレイして居たためそのまま床で眠ってしまっていた。

 そして井宮はというと……。


「なっ……こいつは……」


 俺の隣で背中を向けて寝ていた。

 床がヒンヤリしていて気持ちよかったのかもしれないが、なんで俺の隣に?

 

「ちゃんとベッドで寝ろっての……」


 俺はまだ隣で眠る井宮の顔を見ながらそんな事を思っていたのだが……俺はとある事に気が付いてしまった。


「おいおい……なんでこんな無防備なんだよ……」


 井宮の来ていたルームウェアの胸元は大きくはだけ胸がこぼれそうになっていた。

 おまけに下の方なんてパンツがチラチラ見えている。

 俺はそんな井宮に布団を掛け、スマホを手に取って時間を確認する。


「七時か……」


 いつもならまだ眠っている時間なのだが、変な場所で寝たからか変な時間に起きてしまった。

 しかも身体がだるく節々が痛い。


「床でなんか寝たからかな?」


 俺は立ち上がって大きく伸びをし外を見る。

 朝は比較的涼しく過ごしやすい。

 外を見ると今から出社スるのであろうサラリーマンが歩いていた。


「ん……」


 俺が外を見ていると後ろで声がした。

 どうやら井宮が起きたらしい。

 井宮は上半身を起こし、とろんとした目で周りをきょろきょろして俺の方を向いて止まった、

 

「よっ。おはよう」


「ん……おはよ……」


 どうやらまだ半分眠っているようだ。

 髪も乱れいつものきっちりした井宮とは真逆になっていた。


「ねむ……」


「寝るんだったらベッドで寝ろよ」


「ん……アンタは?」


「俺はもう起きた」


「……一緒に……寝よ」


「遠慮しとく」


「うぅ……あっそ……おやす……み」


 井宮はそう言いながらベッドに潜って二度寝を始めた。

 どうやら井宮はあまり朝が強くないようだ。

 俺はその後井宮に借りたパソコンで暇つぶしをしながら井宮が起きるのを待った。

 二時間ほどしてからだろうか、ようやく井宮が完全に目を覚ました。


「はぁ~あ、おはよう」


「あぁ、ようやく起きたか」


「アンタ何時から起きてたの?」


「七時くらいから。お前が起きたら一緒に朝飯買いに行こうと思ってまってたんだよ」


「あら、それは悪かったわね。じゃぁお腹減ったでしょ? 勝手に冷蔵庫開けて何か食べてても良かったのに」


「人ん家の冷蔵庫を勝手に開けられる程肝は座ってねぇよ」


「まぁ、それもそうよね」


「それより早く着替えてくれ、さっさとコンビニ行こうぜ」


「はいはい、じゃぁ準備するから待ってて。てかなんでさっきからこっち向かないのよ」


「自分の恰好見てから言えよ……」


「え? あ……」


 俺の言葉でようやく自分のセクシーな姿に気が付いたようだ。

 井宮は顔を真っ赤にして布団を被った。


「き、着替えるからちょっと出てって」


「あいよ」

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