第271話 好きな人
「大丈夫よちゃんと恥ずかしいわ」
「じゃぁいい加減何か履いてくれ……」
「アンタが見なきゃ良いだけでしょ?」
まぁ、そうなのだが俺も残念ながら男の子、女子のセクシーな姿には本能的に気になってしまう。
「それとも何? 私の身体に興味があるの?」
「い、いや……」
井宮らしくない言葉飛んできた。
いたずらっぽい笑みを浮かべながら井宮はそう言う。
前だったらこんな事は言わなかったし、言う前に何かを履いてくれていただろう。
やっぱり今日の井宮はおかしい。
その理由はよくわかっているのだが、井宮は直接あの日のあの言葉については何も言ってこない。
「まぁ、アンタも男だもんね。もしかして私襲われちゃう?」
「だ、誰が襲うか!」
「えぇ~本当にぃ~?」
「うるせぇ! 良いからイベント回るぞ!」
「はいはい、分かってるわよ」
据え膳食わぬは男の恥なんて言うけど、これは据え膳なのか?
嫌でも俺童貞だし、どうして良いかなんて分からないし、そもそもそう言うのは好き同士の男女がする行為ではないのか?
確かエロゲーでは最初主人公たちはキスからしてたな……。
井宮とキスか……。
って、俺何を考えてるんだ?
「あ、ちょっと! 死なないでよ」
「あぁ……わ、悪い……」
ヤバイ、変な事を考えて操作に集中出来ない。
ってか、今更だけどなんでこいつと夜中に部屋でゲームしてるの?
なんでこんなエロゲーみたいな状況になってるの?
井宮はマジで俺を好きなの?
はぁ……なんであんな言葉一つで井宮に対する見方がここまで変わるんだ……。
そりゃあ可愛いと思うよ?
それに趣味も会うし、唯一遊びに誘う相手だし、でもそれは友人として井宮を気にいってるだけでこれは恋愛感情じゃない気が……。
「ちょっと、聞いてる?」
「え? あ、あぁ悪いなんだ?」
「だから、少し休憩して動画でも見ない?」
「あ、あぁそうだな……」
イベントを少し回ったところで井宮が俺にそう提案してきた。
井宮はタブレット取り出し、ベッドの上に座って隣に座るように俺に言う。
てかよりによってベッドかよ……。
「ほら、一緒に見ましょうよ。秋の新作ゲームのPV出てるわよ」
「あぁ……」
井宮の隣に座り俺はタブレットの画面を見る。
そこには秋と冬に発売される新作ゲームのPVのまとめ動画が写っていた。
「アンタどれ買うの? 私はこのアクションゲームかな?」
「あぁ、それ面白そうだよな。でも俺はこのFPS買うかな」
「あーそれも良いね。でも冬はやりたいゲーム多すぎて手が回らないかも」
いつも通りの会話に安心しているが、心の中では風呂上りの井宮の良い香にかなりドキドキしていた。
くそっ!
いつもはそんな目線で見た事無いのに!
なんで今日の井宮はこんなに色っぽく見えるんだ!?
そんな事を考えていると井宮の肩が俺の肩に触れる。
「お、おい近いぞ」
「何よ、別に良いじゃない」
「いや、少し離れろ……暑い」
「そう? 夜だしそこまで暑くないでしょ?」
「いや、暑い離れろ」
「何よ~緊張でもしてるの?」
「そ、そう言うんじゃない……」
「……少しは意識してるの? この前の告白で……」
「え? あ、いや……」
ついにきた。
俺はそう思った。
まさか自分からこの前の話を振るとは思わなかった。
俺は少し考えたあと井宮に尋ねる。
「俺の事……好きなのか?」
「そうじゃなかったら部屋に入れないし……」
「なんでだよ」
「何でって……話も合うし、趣味も合う、そんで一緒に居て楽しくてずっと一緒に居たいって思っちゃう。それって好きってことでしょ?」
「……そう……なのか?」
「少なくとも私はそうよ」
そう言いながら井宮は顔を俺の肩にうずめて来る。
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