第267話 アイドルは忙しい
*
「はぁ~美味しかったぁ~」
「結局俺が全部作るんですね」
「まぁまぁ、良いじゃないの~私が作るとなんか全部黒くなるんだから」
「それは川宮さんが加熱しすぎなんですよ」
結局飯は俺が作った。
まぁ、川宮さんも疲れてると思ったから全然良いんだど……調理中にボディータッチをするのは辞めて欲しい。
「はぁ~今日も疲れたぁ~」
「お疲れ様です」
「はぁ~あ、今年も全然遊び行けなかったなぁ~」
「まぁ、川宮さんはお忙しいですし」
「でも圭司君ともう一回デートくらいしたかったなぁ~」
「なんで俺なんですか……そこらへんのイケメン俳優とでもしてくれば良いでしょ?」
「うわぁー私の気持ち知ってる癖に意地の悪いこというねぇ~」
「すいません。でも俺みたいな男より同じ業界の人の方が良い人居るんじゃないですか?」
「居ないから圭司君を好きになったんでしょ?」
「そ、そうですか……」
やっぱり好きと言われるのはむず痒い。
いや嬉しく無いわけではないのだが……こう言われると何を言ってたら良いのか分からないな。
「ねぇ……圭司君再来週私と仕事でしょ?」
「はい、前から言われてたCMの撮影ですね」
「いよいよデビューかぁ~、頑張ろうね」
「そうですね。やるからには頑張ります」
「そう言うところは真面目だねぇ~」
「まぁ、約束ですから」
「そうだね……」
「は、はい……」
「………」
「………」
気まずい。
食後の会話に話を咲かせるがどうしても二人だけだと話題も少ない。
だからと言って夏の思い出なんて仕事仕事の川宮さんにする訳にはいかない。
何を話したら良いか分からないでいると、沈黙に耐えかねたのか川宮さんが俺にこう言った。
「そ、そう言えば買い物に行くついでだったんじゃないの?」
「あ、あぁ別に良いです。どうせいつでも買えますし」
そう言えば俺ゲーム買いに行って岡島さんと会って、川宮さんの撮影を見学することになったんだっけ……まぁ良いか、どうせゲームはいつでも買えるし。
「何を買いにきてたの?」
「ゲームですよ」
「好きだねぇ~、あ! そう言えば前に買ったやつお姉さんクリアしたよぉ~」
「マジですか? 忙しいのに良くクリアしましたね」
「うん! 面白くて毎日に少しづつやったたんだぁ~前橋君がゲーム好きな気持ちもなんか分かるよ」
「でしょ? そう言って貰えるとオススメしたかいががありました」
「最近はえっとオンライン対戦ってのをやってるんだけど、全然勝てないんだよねぇ~」
「あぁ、あのゲームのオンライン対戦はそれこそお礼状の猛者ばっかりなので」
子供向けのタイトルでありながら、オンライン対戦で本気になっているのは大人達という矛盾。
マジであのゲームのオンライン対戦勝てないんだよなぁ……。
「で、それを岡島さんの話したらネットで動画配信でも始める? なんて言われちゃって……」
「あぁ……最近多いですよね? 芸能人が動画サイトとか配信サイトでゲームするの」
「正直パソコンなんて全然使った事ないから分からないし、最近は住所を特定されるとか、いろいろ怖いからする気はないんだけどさ、流行りに乗らないと仕事なくなっちゃうから勉強してるんだ」
「え? そうなんですか?」
「うん、事務所からパソコンも用意して貰ったし! まぁでも……一回も箱を開けてないのよねぇ……」
「全然勉強してないじゃないですか」
「だって! なんか開けた瞬間爆発とかしそうで!!」
「パソコンは爆弾じゃないです」
「でも機械なのよ!」
「貴方の買ったゲームも機械です」
「はぁ~やらなきゃいけないのは分かってるんだけど、なんか覚えること多くて……みんな良くやってるよ……」
疲れきった様子で机に頭を付ける川宮さん。
今時のアイドルってのは色々やることが多くて大変らしい。
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