第265話 恋したアイドル
「やってしまった……」
まさか丁度上映していた映画が男性同士の恋愛を描いたホモ映画だったなんて……しかも地味に評価高いし。
高ノ宮をなんとか追い払った俺は買い物に来ていた。
目的はもちろんゲームソフトだ。
しかし、今年の夏は結構金を使ってしまったので正直金欠だ。
「はぁ~あ、今日あのゲーム買ったらまたバイトしないと厳しいなぁ……」
「そんな時こそ自分の見た目を活かす時じゃない?」
「うぉっ!! びっくりしたぁ……脅かさないで下さいよ岡島さん」
歩いていると川宮さんのマネージャーで一応俺のマネージャーでもある岡島さんが声を掛けてきた。
レディーススーツを着ていることから恐らく仕事中なのだろうということが伺える。
「文化祭以来かしら? 楽しい夏休みは送れた? ちなみに私は夏休みなんてなかったわ」
「お、お疲れ様です」
流石社会人、大変そうだな。
俺も数年後にはこうなるかと思うとなんだか大人になりたくないと思ってしまう。
「バイト探してるの? なら丁度良いわ、前に言ってたCMの撮影再来週にでもするから予定空けておいてね」
「あぁ、やっとですか」
俺は過去に川宮さんといろいろあって芸能事務所に入ることになった。
その時にCM一本に出演するという約束を交わしたことがあり、撮影がようやく再来週あるとのことだった。
「そうよ、前橋圭司と言う、うちの新しい金ずるを世間にお披露目する記念すべきデビューCMよ」
「デビューって……俺はその一本以外に芸能活動はしませんよ」
「ふっふっふ、CMのギャラを見た後にそんなことが言えるかしら?」
「はいはい」
正直CMに出演するのも本当なら嫌なのだ。
しかし、俺が芸能事務所に入らないとまずいこともあったので仕方なく俺はCMに出ることも芸能事務所に入ることも了承したのだ。
「それで今日は何してるの? 私は真奈の仕事で来てるんだけど」
「あぁ、ちょっと買い物ですよ」
「またゲーム? ほどほどにしないと目が悪くなるわよ」
「うちの母さんと同じことを言わないでください……てか川宮さん今ここら辺で仕事ですか?」
「えぇ、売れっ子だから夏休みも毎日仕事よ。貴方に会いたいって喚いてたから少し会ってあげてくれると助かるんだけど」
「川宮さんが?」
そう言えばあの人には夏休みに入ってから一切会ってないし、それにメッセージもまったく送ってなかったな。
少しくらいなら良いか。
「わかりました。一応先輩ですし挨拶していきます」
「ありがとう、まだ時間あるからコーヒーでも飲まない? 奢るわ」
「御馳走様です」
俺は岡島さんにアイスコーヒーを奢ってもらい、一緒に川宮さんの仕事場に向かった。
場所は近くの公園だった。
川宮さん以外にもテレビで見たことのある綺麗な女性や可愛い女の子がいて、それぞれポーズを決めてカメラマンに撮影されていた。
「へぇーいっぱい居るんですね」
「まぁね。今回は雑誌の企画で今をときめくアイドルと女優の特集だからね。ちなみに真奈は表紙よ」
「すごいっすね、流石は大人気アイドル」
そんな大人気アイドルに好かれてるのか……。
俺はそんな事を考えながら川宮さんの方を見る。
「こうしてると普通に可愛いんですけどね」
「何を言ってるの! 真奈は可愛いわよ!」
「そ、そうですね……」
二人になる結構強引だし、俺の話を全く聞かないけどな……。
撮影は終盤だったこともあり、直ぐに終わった。
女の子達は次々にマネージャーと次の現場に向かったり、帰ったりとせわしなかった。
そんな中で笑顔を崩さずに川宮さんは現場の人に挨拶をしながら戻って来た。
「お疲れ様でした。またお願いします」
「お疲れ様、真奈」
「はい、お疲れ様で……って圭司君!? な、なんでここに?」
「あぁ、どうもお疲れ様です。いや、偶然通りかかって岡島さんに声を掛けられて……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます