第262話 私よ
「……高城」
「な、なに?」
井宮の言った決着。
それはあの告白の返事のことだろう。
今の俺の気持ちを高城に伝えよう。
そうじゃないと前に進まない。
俺はそう思い、高城と向き合い話を始めた。
「高城、俺は正直今はお前と付き合うとかそういうのは出来ない」
「……そう……だよね」
「悪い……まだ整理が出来てないんだ。色々なやつに好きだって言われて……」
「知ってるよ……みんな可愛いもんね」
「高城も負けてねぇよ」
「え……あ、ありがとう……」
こんな面倒な俺を好きにならなくても良い男なんて腐るほどいると思うんだけどな。
「ねぇ、私も二人と同じように好きで居てもいい?」
「え? いや、まぁそれくらいなら……でも、俺は今のところ誰とも付き合う気はないぞ
?」
「うん、わかってる。でも私も負けたくないから……」
高城はそう言うと俺に近づきニコッと笑顔を浮かべる。
「昔は両思いだったのにね」
「え……」
高城はそう言うと俺の頬にキスをして、そのまま離れた。
「ライバル多いけど、私頑張るよ! 覚悟してね」
「え…あ、いや……あぁ……」
「ありがとうね」
「な、何が?」
俺は頬にキスをされたことで頭が混乱していた。
「返事をちゃんとくれて……少し不安になっちゃったよ、返事いらないって言ったの私だけど、やっぱり何か返事は欲しかったから」
「そ、そうか……」
「これからも今までどおり接してくれると嬉しいな」
「あぁ、それは良いんだが……その……」
「なに?」
「アプローチはお手柔らかに頼む」
「うふふ、それは難しいかな?」
「え!?」
そういう高城の顔は小悪魔のようで可愛らしかった。
高城とのこともこれでひとまず解決した。
しかし、これで俺は三人の女子から好意を寄せられていることになる。
なんで俺みたいな面倒なやつをみんな好きになるんだ?
なんてことを考えていると、高城がスマホを見ながら俺にこういった。
「あ、ごめんね。私もうそろそろ帰らないと」
「あぁ、そうなのか? 送るか?」
「ううん、大丈夫だよ。お父さんが迎えに来てるから。それよりも椿ちゃんと合流して上げて」
「え? あぁ、そういえばあいつどいった?」
「じゃぁ、私はこれで」
「あぁ、じゃぁな」
高城はそう言って帰って行った。
井宮のやつ気を使ってどっかに消えてくれたのは良いが、一体どこに行ったんだ?
俺はスマホを取り出して井宮に連絡を取ろうとする。
すると……。
「終わった?」
「うぉっ! い、井宮……いつの間に……」
「ちゃんと話せたの?」
「え? あぁ、なんとかな……でもまだ色々大変そうだ」
「あんたモテるものね。しかも可愛い子ばっかり」
「みんな見る目なさすぎだろ……なんで俺みたいなゲームオタクを……まぁ顔は親が親だからあんまり悪くねぇけど…」
「顔だけじゃないわよ」
「え?」
「みんな、きっとあんたの中身が好きなのよ」
「それこそ理解出来ない! 俺なんてかなり面倒な性格してるんだぞ!?」
「自分でそれ言う? てか、そこまで面倒な性格でもないでしょ?」
「いや、俺だったら絶対に付き合いたくないレベルだな」
「男と女じゃ感じ方が違うのよ」
「まぁ、そうだけどよ……」
「せいぜい苦しみなさい、あんたが垂らしこむのが悪いんだから」
「別に垂らしこんだわけじゃないんだが……」
「垂らしこんでるでしょ? 四人から好かれてるんだから」
「え? いや、三人だろ?」
川宮さん、高ノ宮、そして高城……三人だよな?
「何行ってるのよ、四人よ」
「え? 三人だろ? 後の一人は誰だよ」
「……私よ」
「……はい?」
そういった井宮の耳は真っ赤になっていた。
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