第261話 気を使える女は損をする
姉貴のいつものをなんとかした後、俺は仕方なく花火大会の開場に向かった。
「はぁ……家でゲームしたい」
「来て早々それかよ」
「当たり前だ。俺は別に来たくて来たわけじゃねぇ」
「まぁ、そうだとしても今日は頑張ってもらうぞ」
「頑張るって何をだよ」
「俺と桜川さんのサポートだよ」
先に来ていた九条と俺は合流して話しをしていた。
「サポートっつってもお前らを二人にすればいいんだろ? 楽勝だよ、全員集まった所でお前ら残して俺たちが帰る」
「そんな怪しい事出来るか」
「っち、その作戦なら簡単なのに」
「お前マジでそんな事しようとしてたの?」
くそっ上手くいけばさっさと帰れると思ったのに……。
それから数分して女子の方がやった来た。
井宮と桜川さん、そして高城。
高城は俺の顔を見るなり顔を反らした。
まぁそうだよなぁ……俺も思わず顔を反らしちまったし……。
「お待たせ、来たわよ」
「あぁ、悪いな急に」
「別に良いわよ、皆海ぶりね」
流石気を使える女の井宮、この前の打ち合わせなど無かったかのように話を進める。
「久しぶりだね、九条君に前橋君」
「そうだな桜川」
「久しぶり」
少し微笑みながら桜川にそう言う九条に続き俺は短くそう応える。
こいつは好きな子前にしてもクールでカッコいい対応するんだなぁ……。
内心は緊張してたりすんのか?
そんな事を俺が考えていると……。
「ま、圭司君。久しぶり」
「え? あ、あぁ……久しぶりだな高城」
高城が俺に話掛けてきた。
やっぱり意識しちまうな……まだ告白の答えも出してないし。
でも、もういい加減返事をしないと高城に失礼だ。
だから今日はここに来たのだ。
「げ、元気だった?」
「まぁ、そうだな。ずっとゲームしてたよ」
「そ、そっか……圭司君らしいね」
「ま、まぁな……」
「………」
「………」
会話が続かない……気まずい、なんか腹が痛くなってきたな、帰っても良いかな?
「はいはい、さっさと行くわよ」
「あ、あぁそうだな」
「う…うん」
井宮が間に入ったことで気まずい空気を脱することが出来た。
ありがとう井宮、やっぱりお前は良い奴だ。
俺たちは最初五人で花火大会開場の出店を巡っていた。
「へぇ~サッカー部って大変なんだね」
「まぁね、桜川さんは部活してないんだっけ?」
「うん、私はバイトを頑張ってるから!」
「へぇ~なんのバイト?」
九条と桜川さんはなんだか良い感じだ。
これなら俺達が協力しなくても大丈夫なんじゃないだろうか?
そんな事を俺が考えていると、井宮が俺の脇を小突いてきた。
「なんだよ?」
「そろそろ二人っきりにするわよ」
「え? あぁ、そう言えばそうだったな」
出店の唐揚げ棒が美味くてすっかり忘れてた。
さて、今良い感じだし、このまま俺達三人はどっかにフェードアウトだな。
「よし、高城行くぞ」
「え? どこに?」
「後で訳は話すよ」
俺はそう言って高城を連れて井宮と一緒に九条達の元を離れる。
「よし、これでもう俺達の役目は終わりだな」
「後は九条君がなんとかするでしょ?」
「ねぇ、二人ともなんで九条君達から離れたの?」
「あぁ、実はな……」
俺は高城にこの花火大会の本当の目的を話した。
「そんな感じで九条と桜川の距離を縮める為にこの花火大会は企画されたんだ」
「そうだったんだ」
「あぁ、悪いな何も言ってなくて」
「ううん、全然良いの……圭司君と会えたし……」
「あ……そ、そうか……」
なんか気恥ずかしいな……。
「私が居ること忘れてない? お二人さん」
「え? い、いやそんなことは無いぞ!!」
「そ、そうだよ! 椿ちゃんの事はちゃんと居るって分かってたよ!」
「はいはい、じゃぁアンタらもそろそろ決着付けなさい」
「え? お、おいどこ行くんだよ」
「気を使ってんのよ馬鹿」
井宮はそう言って何処かに行ってしまった。
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