第260話 計画始動

 家にやって来た井宮はなんだかいつもと違う気がした。

 なんていうのだろうか? 

 いつもよりキラキラしているというか、いつもと雰囲気が違う。

 なんでだろ?

 あぁ、あれか。

 もしかしたら何処かに出掛けてきて帰ってきた後だったとかか。


「な、何よ……」


 じろじろ見ている俺に気が付き井宮が尋ねる。

 

「あぁ悪い悪い、なんかいつもより可愛かったから見てた、さぁ上げれ上がれ。にしても暑いなぁ~……ん? どうした?」


「な、なんでもない!!」


「おっと……なんだあいつ? そんなに暑かったのかなぁ? 顔真っ赤にして」


 俺を押しのけてリビングに入っていく井宮。

 九条はそんな井宮の登場に「よぉ」と片手を上げてクールに挨拶をする。


「まさか九条君が紗季を好きだったなんてね」


「良いだろ別に」


「本当だよな? 一人の方が色々気が楽なのに」


「そう言う事を言ってるんじゃないわよ……」


「え?」


 俺は井宮にお茶を出しリビングで三人で話し始めた。


「頼むよ井宮、協力してくれ。出来ればうちの男子には内密に」


「もう既に一人にバレちゃってるけど?」


「こいつは良いんだ、他の奴らとは別な意味で馬鹿だから」


「確かに」


「おいお前ら、今すぐに灼熱地獄の外に放り出してやろうか?」


「まぁ良いけど、その代わりあの子に迷惑掛けないでよ?」


「分かってる。花火大会で仲良くなって徐々に距離を詰めてって感じで考えてる」


「無難ね。それでもちろん私にもメリットはあるんでしょうね?」


「いや既にメリット出てるだろ?」


「え? どういう事?」


 そう言いながら何故か俺の方を見る九条。

 そして顔を真っ赤にして怒りだす井宮。

 なんだ?

 一体どうしたんだ?


「あんたねぇ! 良いのよ、こっちは手伝わなくても」


「分かったよ、コンビニの高いアイスでどうだ?」


「OKのったわ」


「え? 俺には?」


「お前と俺はお互いに弱みを握りあってんだろうが」


「えぇ~俺もアイス食いたい」


「っち、分かったよ。桜川さんと付き合えたら奢ってやる」


「流石九条! 話が分かる! 俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ!」


「アイス一個で凄い手のひら返しだな」


「まずは桜川さんを誘わないとね」


「あぁ、それと高城さんも頼む」


「え? なんで?」


「ほら、この馬鹿がまだ高城さんとの事をちゃんとしてないだろ? それなのにこいつが他の女子と遊びになんていったら高城さんが可哀想だろ?」


「確かにそうね、そんな事をしたらただのクズね」


「あ、あんまりいじめるなよ……」


「まぁ、それは全然良いけど。私も優菜を誘いたいし」


 井宮はそう言いながらスマホを操作し早速二人に電話をかけ始める。

 無事に桜川さんと高城の二人に連絡がいき舞台が整った。


「じゃぁ、当日は九条と紗季を二人にすれば良いのに」


「なんだ楽勝じゃん、そのまま帰ってゲームしようぜ井宮」


「アンタどこまで薄情なのよ……」


 そんなこんなで俺達は九条と桜川さんをくっつける計画をスタートしたのだった。

 そして、なんやかんやであっという間に時は過ぎ、花火大会当日がやって来た。




「圭ちゃん?」


「ん? なに?」


「きょ、今日はこの近くで花火大会があるんだって」


「らしいね」


「よ、良かったらおねぇちゃんと一緒に行かない?」


「あ、ごめん無理。井宮達と行く予定だから」


「え?」


「ん? どうしたんだ姉貴……なんで無言で迫ってくるの? え? いや怖いんだけど!!」


「圭ちゃん?」


「は、はい?」


「それって……もしかして……でーと?」


「いや、そういうんじゃ……」


「嘘つかないでよ!!」


「怖い怖いよ、突然大声出さないでくれよ……」


「どうなの? ねぇ……圭ちゃんはなんで私のいう事を聞いてくれないの? なんで私だけのものにならないの?」


「あぁ、いつものか……母さん姉貴がいつもの発祥したぁー!」


「はいはーい、いま行くからまってなさーい」


「ねぇ圭ちゃん答えてよぉぉぉぉ!!」


 姉貴はいつも通りのようだ。





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