第259話 いつものあいつじゃない!!

 九条の言っている意味が分からないでいると、井宮から電話では無くメッセージで連絡が来た。


「あ、井宮からだ」


「なんだ、じゃぁ電話出来ない状態だっただけか」


 メッセージの内容は一言だけだった。


『どうかした?』


 俺はそんな井宮に正直に事情をメッセージで説明した。


「よし、これでOKっと」


「なんて送ったんだ?」


「九条が盛ってるって」


「馬鹿にしてんのか?」


 そう言いながら九条が無表情で俺に掴み掛かってくる。

 何をそんなに怒ることがあるんだ?


「井宮から『はっ?』ってメッセージが来た」


「そりゃそうだろ……普通に事情を説明しろよ」


「いや、長文打つの面倒で」


「いい加減にしろよお前……」


 面倒だったが、俺は井宮にここまでの九条とのやり取りをメッセージに書いて送った。


「はぁ、疲れた」


「それで、井宮からメッセージは来たか?」


「まだこねぇよ。しかし、花火大会なんて人の多いところに行ってまだ楽しいんだ?」


「楽しいだろ? あの祭りの雰囲気。それに花火だって綺麗だろ?」


「どこがだよ。それに花火だってただの光だろ? やっぱり家で花火の生配信見ようぜ」


「それじゃぁ意味ないだろ」


「エアコンの効いた部屋でエナドリでも飲みながら花火を見た方が良いだろ?」


「古き良き日本の伝統を大事にしろよ」


「最先端技術を使いこなすのも大事だろ? だから自宅で花火大会に変更しようぜ。皆でオンライン通話しながら」


「何がなんでも行きたくないんだな」


 そんな話をしていると井宮から再びメッセージが来た。


『良いけど、アンタもくるの?』


「えっと……本当は行きたくな…い……っと」


「頑なだな」


「あ、返事来た」


『じゃぁなんで一緒に行くのよ? アンタってそんなに九条と仲良かったっけ?』


 あぁ……そう言えばそうだな……。

 どうなんだろ?

 俺は九条と仲が良いのだろうか?


「なぁ、俺とお前って仲良い?」


「はぁ? 今度はなんだよ?」


「いや、井宮に聞かれて」


「まぁ、普通くらいじゃないか?」


「えっと普通くらいと……」


「お前一体井宮と何を話してるんだよ」


「あ、返信来た」


『そんな仲良くもないのに、九条の恋愛手伝うの? 自分の恋愛も上手く行かないのに』


「うっ……なんか今日の井宮冷たい……」


 俺がそう言いながらダメージを受けていると、九条がスマホを覗き込んできた。

 

「えっと……あぁ……まぁそう言われるよな?」


「俺だってわかんねーんだよ……女子と付き合ったことなんてないし……」


「はぁ……まさか学校一のモテ男が女子の告白にも上手く対応出来ないなんて……他の奴が見たら驚くだろうな」


「勝手にお前らが外見だけでそう思っただけだろ……はぁ……学校行きたくない」


「ここまで顔が良いのに自信のない奴も中々居ないと思うが……てか、どうなんだよ? 井宮さんは協力してくれそうなのか?」


 九条がそう言ったのとほぼ同時に井宮から連絡が来た。

 

『桜川さんの予定は良いって』


「お、意外と聞いてくれたようだ」


「よしっ! じゃぁOKだな! あとは井宮さんにも協力をお願いするだけだ」


「家にこれるか聞いてみるか?」


「あぁ、頼む」


 俺は井宮に今から家にこれないかとメッセージを打つ。

 少しして井宮から『わかった』と返信があり、それから30分ほどで井宮が家にやって来た。


「悪いな急に」


「まったくよ……それで…その……他に誰かいるの?」


「あぁ、九条がいるぞ」


「あっそ」


「ん? なんかお前怒ってる?」


「別に……なんでも無いわ」


「そうか? まぁ良いけど、まぁ暑いしリビングに来いよ」


「ありがと」


「ん? てかお前……」


「な、何よ……」


「いつもとなんか雰囲気違くないか?」



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