第258話 夏の終わりは悲しい

 楽しい時間というのはあっという間だ。

 この前夏休みが来たと思ったら、もう夏休みも終わろうとしている。


「はぁーあ、夏も終わっちまうなぁ.....」


 クラスメイトとの海旅行も無事に終わったが、今度は九条の恋に協力することになってしまった。

 それに俺は高城の告白に対してまだ返事をしていない。

 ゲームセンターでは結局遊んで終わりだったし、面倒事は増えるばかりだ。


「面倒だけど.....仕方ないな.....」


 俺はそんな事を考えながら画面に映るドラゴンを自分のアバターを操作して倒して行く。

 

「ゲームみたいに簡単だと苦労しないんだがな...」


 そんな事を考えていると、家のインターホンが鳴った。

 また高ノ宮か?

 なんて事を考えながら俺は部屋から出て玄関に向かう。

 今日は俺以外家には誰も居ない。


「はい?」


「よお、突然悪いな」


「九条...本当だよまったく」


「お前って包み隠さないのな......まぁ良いや、詫びと言っちゃなんだけど、アイス買ってきたからよ」


 おぉ、こいつは知り合いの家に手土産を持って来れる奴なのか....流石はうちのクラス唯一の常識人。


「それで何のようだ? 急に家にくるなんて」


「この前ゲーセンで話したろ? お前に協力してほしいって」


「そうだけど俺は忙しいんだ、今も世界を守る為にドラゴンと死闘をだな……」


「はいはい、お前は生粋のゲームバカだったな。相談が終わったら直ぐに帰るから安心しろよ」


「手短に頼むぞ」


 俺は九条をリビングに通して話しを聞いた。

 なんでも九条は気になっている女子を明後日に行われる花火大会に呼びたいらしい。


「そんなの普通に一緒に行こうってメッセージ送れよ」


「問題はそこなんだ……俺は桜川の連絡先を知らないんだ」


「じゃぁゲームオーバーだな」


「いや、だからお前に相談に来たんだよ」


「俺に相談してもその桜川ってやつの連絡先は出てこないぞ? 出てくるのは馬鹿共の連絡先だけだ」


「いや、そうとは限らない……お前井宮さんと仲良いよな?」


「あぁ、そうだけど?」


 そう言えばあいつとも海での一件以来なんだか少し距離を取られてる感じがするんだよなぁ……なんでだろう?

 最近ゲーム忙しいとかで一緒にしてないし。


「井宮さんなら桜川さんを誘えるんだよ」


「へぇーじゃぁ井宮に言えよ」


「だからお前の家に来たんだよ、悪いが今から井宮さんに連絡して明後日の花火大会に誘ってくれ」


「なんで俺がそんなことを……それに俺は花火大会なんていかんぞ?」


「協力するって言ったよな? お前と俺、井宮さんと桜川さんと高城さんで花火大会に行こうぜ」


 なにその絶対面倒な事になるイベント……正直絶対に行きたくない。

 そもそも俺は高城と今複雑な感じになってるんだぞ!

 そんな状況で花火大会になんて行けるか!

 俺は剣と魔法の世界に戻る!!


「いやだ! それ以外だったら協力してやる」


「そうか……なら仕方ない。お前が高城さんに告白されたことをクラスの男子のグループに投下するしかないな」


「それだけはマジで勘弁して」


 そんな事したらあいつら今から俺の家に来て制裁を加え始めるぞ!

 あの馬鹿共他人の色恋を邪魔するこちに命を掛けてやがる。

 もし学校一の美少女の片割れに告白されたなんてバレたら……。


「市中引き回しは嫌だ……」


「だろ? じゃぁ協力しろ、まずは井宮さんに電話しろ」


「わかったよ……でもあいつ最近電話出ねーんだ」


「なんだ? 喧嘩でもしてるのか?」


「いや、タイミングが悪いというか……」


 そんな話をしながら俺は井宮に電話をかける。

 数回コールをするがやっぱり出ない。


「ダメだ。なんでだ? 前は二回目のコールで出ることが多かったのに……」


「………お前さ」


「ん?」


「多分だけど、これからかなり面倒な事になると思うぞ?」


「え? なんでだよ?」


「そのうち分かるよ」


 

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