第257話 遂に参戦



「告白の返事まだ聞いてないの?」


「うん、困らせちゃうのも嫌だし。それに多分前橋君はこれからまた困らなくちゃイケなくなるから」


 ゲームセンターで私は優菜ちゃんと話をしていた。

 話題はもちろん、昨日の告白についてだ。


「また困るってどういうこと?」


「うふふ、多分私の予想だと近いうちにもう一人前橋君に告白すると思うからその心配」


「もう一人って……」


 一体誰だろう?

 なんてことを考えて居ると高城さんがニコニコしながら私を見てきた。

 

「え? 私?」


「うん……次は椿ちゃんの番だよ」


「い、いや……でも私は……」


 私はそんなのではない。

 そう言おうとしたけど、その瞬間今朝の事を思い出してしまった。


『いや、お前と何度かあるぞ』


 確かにそう言えば私はあの三人よりも前橋と仲が良い気がする。

 お互いに家にも行ったし、出掛けたりもしたし、何だったら毎日のように電話もしてる。

 まぁ、ゲームをする関係で通話でのやり取りの方が良いからだけど……。

 そんな事をしておいて、私はそんなのじゃないなんて言うのは何か違う気がした。

 正直、今朝意識してしまったのも私の中にそう言う気持ちがあるからだと思う。

 だから否定出来なかった。


「言って今の関係が壊れるのが怖いのも分かるけどね……」


「ま、まぁ……」


 そんな恐怖を優菜ちゃんは恐れずに現状を変えようと頑張ったんだ。

 多分、自分の気持ちを隠したままだったのが辛かったのかもしれない。

 正直彼女は凄いと思う。

 ずっと前橋を思い続けて、努力して可愛くなって、そして告白した。

 私みたいな知り合って数カ月で好きになったのとは訳が違う。

 それを考えると私は絶対に優菜ちゃんには勝てない気持ちになってしまってしまっていた。

 でも、あいつと一緒にいるのが好きなのは事実だ。

 今朝海であった時も偶然だったけど嬉しかった。

 二人でゲームの話をしている時が一番楽しくて、誰といるよりも嬉しい。

 最近は前橋が他の女子と話をしているのを見るだけでも少し嫌な気持ちになる。

 そんな気持ちになる度に私は『あぁ、私ってあいつが好きなんだ』と自覚するようになってしまった。


「椿ちゃん」


「え? 何?」


「負けないよ」


「……うん」


 そう言う優菜ちゃんの目は真っすぐだった。


「こんな事をいうのも無視の良い話しだけど、どんな結果になっても私と友達でいてくれる?」


「もちろんよ、どんな結果でもね……」


「ありがとう」


 どんな結果でも……それはどちらかが振られて、どちらかつ付き合う事になった時の話しだろう。

 しかし、どちらも付き合えなかった場合のこともある。

 あいつ優菜ちゃんをどう思っているんだろう?

 それに他の二人のこともある。

 私は……どうしたら良いのだろうか?


「あぁぁぁぁ! もうなんか考え過ぎて頭痛い! 優菜ちゃん一緒にゲームしよ!」


「え? う、うん良いけど……」


 私はそう言って優菜ちゃんの手を取ってゲームの筐体を探し始めた。

 色々考えるのはもうやめた。

 私は前橋が好きなんだ。

 そして、私の友達は私との恋の真剣勝負を望んでいる。

 考えるなんてもうやめだ。


「優菜ちゃん」


「え、なに?」


「私も負けないから!」


「……うん!」


 私は彼女にそう言った。

 今まで彼女から言われていた言葉を私が言った。

 まずは彼女と同じところに立つ事からだ。

 既に彼女が一歩リードしている。

 しかも彼女意外にもライバルが多い。

 それでも私は自分の気持ちに正直になると決めた。

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