第255話 海行くぞ20

「勘違いって、どう見たらそう思うんだよ?」


「いや、お前ら二人っていつも仲良いじゃん? 今朝はなんかお前ら変な感じだったし、俺はてっきり井宮がお前の告ったのかと……」


「いやいや何で俺と井宮が変な感じだとそうなるんだよ」


 九条は話をしながらゲームを再開する。

 次々にゴールを決める九条を見ながら俺は話を続ける。


「誤解の無いように言っておくけど、俺と井宮は趣味が合うだけだぞ」


「それでも仲良いんだろ? 多くの場合は仲良い女子と付き合うケースが多いだろ?」


「そうなのか? 俺は付き合ってことないから分からない」


「まぁでも高城の事もあるからな、とりあえずはそっちから何とかしろよ」


「そっちからって……なんで井宮と付う流れなんだよ」


「俺はお似合いだと思うけどな……」


 九条は話をしながら黙々とゴールを決める。

 話しながら良く入るものだと思いながら俺は九条に井宮とはなんでもないと告げる。


「なんだよ急に、もしかして九条って高城が好きなのか?」


 そうなら納得が行く。

 九条が高城を好きで俺が井宮とくっ付けば自分にチャンスがやって来ると思って俺を誘導しているのではないかと。

 

「ちげーよ、アホ。お前って頼りになるし、結構信頼も出来るけど、こと恋愛に関しては馬鹿なのな」


「は?」


 なんでここまで言われなければいけないんだ。

 いや、まぁ……言う通りだけど……。


「まぁ、うちのクラスの男子って馬鹿ばっかりじゃん」


「あぁ、そうだな」


 こいつ、話しが分かるじゃないか。


「だからお前とくらいしかこういう話しできねーからさ」


「そうだな、こんな話をクラスでしたら恐らく花壇に埋められてるな」


「実際俺はられたぞ」


「マジで!?」


 流石うちのクラスの馬鹿共、行動力も馬鹿そのものだ。


「まぁ、そんなんだから……さ……ちょっとお前に相談あってよ……」


「はぁ?」


 ここにきて相談?

 一体なんだ?

 まさか!!

 こいつが好きなのは井宮だったのか!

 だから仲の良い俺から色々情報を聞き出そうとしていたとかそういうあれか!

 なるほど、それなら納得もいく。

 確かにこんな話しを他のクラスメイトにしたら、イケメンの九条はモテないクラスメイト達から、容姿が良いというだけでフルボッコだもんな。


「なるほど、話しは分かった」


「いや、まだ何も言ってねぇよ。お前分かってねぇだろ?」


「え? お前が井宮に惚れてるって話しだろ?」


「全然ちげーよ。やっぱりお前馬鹿か」


 また馬鹿と言われてしまった。


「じゃぁなんなんだよ! ちゃんと説明しろ!」


「だから今説明するって言ってるだろ!」


 確かに。


「実は俺……同じクラスの桜川(さくらかわ)が好きなんだ」


「へー誰それ?」


「クラスメイトだろうが」


「いやごめん、マジで知らん」


「幹事までしてたのになんでクラスメイトの顔と名前を覚えてねぇんだよ」


 そう言いながら九条はゲーム機から離れスマホを取り出して写真を見せる。

 

「この右奥の子だよ」


「え? お前隠し撮り……引くわぁ……」


「ちげーよ馬鹿! 手前に馬鹿二人写ってんだろ!」


 確かに写真の手間には馬鹿二人(英司と八代)が写っていた。


「あぁ、居たなこんな子」


 写真を見て思いだした。

 確か名前は桜川紗季(さくらかわ さき)、井宮や高城に隠れてはいるが普通に可愛い女子生徒だ。

 ウェーブ掛かったわずかに茶色い髪に大きな瞳が特徴的な子だ。

 まぁ、それ以上の情報は全く知らんけど。

 

「少し前から気になってたんだけど……なかなか接点が無くてな……どうしたら良いと思う?」


「なんでそれを俺に聞く?」


 さっきも恋愛経験無いことを公言したつもりなんだが?

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