第249話 海行くぞ15

 え?

 嘘?

 告られた?

 高城に?

 マジ……。


「……あ、あの……」


 何か話さなければと思ったが俺も何を言って良いのか分からなかった。

 良いよ、じゃぁ付き合おう。

 なんて事は言えない。

 なぜなら俺はもう既に二人の女性の告白され、告白を断った……しかし二人は俺にアプローチを続けている。

 というか、俺はそもそも高城をどう思ってるんだ?

 好きなのか?

 そりゃあ初恋の子だし、性格も全く変わってなくて安心はしたけど……。

 でも……。


「返事はしなくて良いよ」


「え?」


 俺が困っていると高城が笑顔でそういった。

 その笑顔がなんだか悲しそうで俺はなんだか嫌な感じがした。

 

「知ってるよ、きっと川宮さんと高ノ宮さんのことでしょ? 昔から前橋君はモテるから」


「悪い……」


「大丈夫、やっと私も言えたから……転校してからもずっと好きで、いつか会いたいって思ってその時可愛いって言って欲しくて頑張ったんだ……」


「別に昔から高城は可愛いだろ……」


「うふふありがと、でもね私は前橋君の隣に居ても恥ずかしくない可愛い子になりたかったんだ……だからダイエット頑張ったし、メイクもファッションも勉強したんだ……」


 俺の為にまさかここまで自分を変えるなんて……高城は凄いな。

 

「話せて良かったよ……返事は当分いらないよ」


「え? どしてだ?」


「悩んでほしいからかな? 三人の中から誰かを選ぶのか、それとも三人全員振っちゃうのか……それとも他の誰かを選ぶのか……」


 高城はそんな事を言いながらホテルの方を見つめていた。

 

「じゃぁ私先に戻るね」


「じゃ、じゃぁ俺も……」


「ダメ」


「え……」


 そう言って高城は俺を止める。


「気まずいから……今は一緒に居ない方が良いよ」


「あ………悪い」


 高城はそう言うと直ぐにホテルに戻って行った。

 一人になったビーチで俺は深くため息を吐く。


「はぁぁぁぁぁ……なんで俺はここまで鈍感なんだ……」


 自分の鈍感さが嫌になった。

 あの高城の寂しそうな笑顔を見た瞬間、既に俺が彼女を傷つけていることに気が付いた。


「俺も気が付かないうちに誰かを傷つけて……」


 自覚することは大切だ。

 自分が他の男子よりも良い顔立ちをしていることには小学校の高学年に上がった時に気が付いた。

 それは回りもそうで、女子は俺に近付いてくるようになった。

 そんな女子に人気のある俺は次第に男子から疎まれるようになった。

 俺の好きな子がお前を好きだって言った。

 ふざけるな。

 おまえなんか女子とだけ仲良くしてろ。

 そんな事を言われるようになってから俺は一人で居るようになった。

 中学になってからは顔が見えないように前髪を伸ばして顔を隠すようになった。

 そのころには女子も俺に興味は無くなり、男子からも別に何かを言われることは無かったけど、俺は他人と関わるのを恐れるようになっていた。


「………傷つくのはみんな同じだよな……」


 海を見ながら過去を思い出し、俺は少し過去の自分の行動が間違いであったと理解した。


「戻ろ……」


 これで告白されたのは三人。

 第三者からしたら羨ましいのかもしれないが、当事者になると大変だ。

 誰かを選ぶにしても選ばないにしても、告白を断ることをしなければいけない。

 それは辛い。

 全く関係ない奴なら別に良い。

 しかし、三人とは変に仲良くなってしまった。

 断れば関係は壊れてしまう。

 少し前の俺ならそれは仕方がないと流せた。

 しかし、今の俺は考え方が変わっていた。


「結構辛い選択だな……」


 良い奴らなのも知ってるし、俺の外見だけ見ていないことも知っている。

 だからこそ俺は彼女達にどういう答えを出せば良いか分からなかった。

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