第247話 海行くぞ13

「俺は待ってるよ、用事もあるし」


「用事ってなんだ?」


「あぁ、なんか高城から用があるって言われてるから部屋でゲームして待ってるよ」


 それにゲーセンは確かに魅力的だったが正直今から外に出るのはだるい。

 さっさとゆっくりゲームがしたい。

 それに夜でも暑いし。


「へぇ~そうかそうか」


「なんだよニヤニヤして」


「いやぁ~別にぃ~」


 俺がそういうと何故かニヤニヤしていた。

 その後ろで九条は真剣な顔で俺に「気をつけろよ」と注意をし、最上は腕を組んで「親友に春が来るか」などと意味の分からないことを言っていた。

 そんな三人とは対照的に何故か英司は鬼のような顔で俺を見ていた。

 しかも小さい声で……。


「ころすころすころすころす……」


 なんか俺を呪ってきそうな感じでブツブツ言ってた。

 普通になんか怖いな……。


「じゃぁまぁ、ごゆっくり」


「俺たちは行くからな」


「しねしねしね」


「笹原さっさと行こうぜ」


 四人はそう言って部屋を出ていった。

 さて、ようやくゆっくりゲームが出来る。

 俺は持ってきた携帯ゲーム機を取り出し、一人掛けのソファーに座ってゲームを始める。

 高城からの電話が来るので隣の机にスマホを置きゲームを始める。

 最近のホテルにはWi-Fiがあるからありがたい、ネットへの接続も楽だ。

 この前買ったハンティングアクションゲームのダウンロードコンテンツが今日配信だったので、早くダウンロードしてやりたかったのだ。


「今回はあの各ゲートとのコラボか……さて、さっさと防具を作っちまおう」


 俺はイベントの周回を始める。

 ネットの攻略サイトには既に攻略方が乗っているがあえて見ない。

 まずは自分で攻略法を探し出す方が好きだからだ。

 

「くっ! こいつ結構厄介だな! 属性って雷か? それと土? ヤバイな、全然対応した装備じゃねぇぞ……」


 苦戦しながらも俺はゲームを楽しんでいた。

 そしてようやく倒せそうというところで俺のスマホが鳴った。


「や、ヤバイ! こんな時に!! ちょっと待っててくれよぉ!」


 俺はそんな一人事を言いながらイベントのボスを倒し、その後で電話に出た。

 恐らく高城だろうけど待たせてしまったな。


「もしもし?」


『あ、もしもし圭司君?』


 電話の相手は案の定高城だった。

 さっき少し付き合って欲しいと言ってたけど一体何だろう?

 

「どうした? なんか付き合って欲しいって言ってたけど」


『う、うん。あのさ……ちょっと今から外に出ない?』


「え? ま、まぁいいけどなんなんだ?」


『あ、会ってから話すよ…』


 一体何のようなんだ?

 しかも外に呼び出されるなんて、結構時間も遅いし女子を一人で待たせるのも悪いしさっさと行こう。

 俺はゲームを中断し部屋のカードキーを持って部屋を出る。


「あ、お待たせ」


「ううん、全然待ってないよ」


 高城はホテルを出て直ぐの所にいた。

 ラフな普段着で外に居た。

 隣の施設は夜中でも営業している施設が多く、ホテルの回りも結構明るい。


「それで用事ってなんだ?」


「う、うん……あ、歩きながら話そうか……」


 高城にそう言われ、俺たちは眼の前の砂浜を歩き始めた。

 なんだかドラマのワンシーンのようだ。

 俺にはそんな機会一度も来ないと思っていたが……まさか美少女と一緒に砂浜を歩くイベントが訪れるなんて……。

 ギャルゲーだったらもう後半のイベントだな。 

 ここで意味深な事を言われたら、いよいよ告白イベントまっしぐらなのだが、流石にそんな事はないだろ。


「きょ、今日は月が綺麗だね……」


「ん? あ……いや、そうだな……」


 あれ?

 確かこれって夏目漱石の……いや、そんなわけないか、ただの偶然だよな?

 そうだ、きっとそうだ。

 そもそもありえないしな、高城さんがそんな意味を込めて俺にそう言う訳がない。

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