第242話 海行くぞ08



 まぶしい日差しに青い海、水着で戯れる女性達。

 そしてその隣で行われる死の儀式……。


「うわぁぁぁやめろ! やめてくてれぇぇぇ!!」


「うるせぇ!! テメェなんださっきの滝沢さんからの応援は!!」


「ち、違うんだ! 別に付き合ってるとかじゃなくて!!」


 さっきのレースで起こった事件により、陸上部小野が男子達によって縛り上げられ砂浜に埋められていた。

 全く、騒がしい奴らだ。

 ちなみに八代は商品でかき氷を食いに行き、九条は呆れながら男子の様子を見ており、英司はノリノリで小野に制裁を与えようとしていた。


「しらねぇんだよ! 俺達がジェラシーを感じた時点でお前は俺達の粛清対象なんだよ!!」


「おい笹原! さっさとこいつを海に流そうぜ!」


「お前なんて海の上をさまよってろ!」


「待て待て! おかしいだろ!! 誰か! 誰か助けてくれぇぇぇぇ!!」


 うん。

 いつも通りだな。

 さて、俺は色々頑張ったし、そろそろ部屋に戻るか。

 そんな事を考えながら砂浜で寝転がっていると、誰かが俺の顔を覗き込んできた。

 

「圭司君」


「ん? あぁ高城か、どうかしたのか?」


「いや、圭司君海で遊ばないのかなって」


「疲れるし、そもそも俺あんまり泳げないからな」


「そう言えばそうだったね、昔も市民プールで溺れてたしね」


「よく覚えてるなぁ……あの頃から泳ぐのは苦手なんだよ」


「でも、気持ちいよ? 一緒に入らない?」


「お、おい引っ張るなよ」


「ほら、折角きたんだからさ」


 高城は俺の手を引き、海の中に連れ出した。

 なんだかいつもの高城と違って強引だな。


「つめたっ!! 以外に冷たいだな……」


「気持ちいでしょ? えい!」


「うわっ! お、おい高城やめっ!」


 海に入った俺に高城がパシャパシャと水を掛ける。

 くそっ!

 こっちだってやられっぱなしじゃねぇぞ!!


「くらえっ!」


「きゃっ! もう! 冷たいよ!」


「先にしたのはそっちだろ? それっ!」


「きゃっ! もう冷たいってば!」


「やられたら倍返しなんだよ」


「もう、意地悪だなぁ~」


「知ってるだろ?」


 なんだか昔を思い出すなぁ……。

 というか、やってて思ったけど……こんなリア充っぽいことをしてあいつらが黙ってるわけないよなぁ……。

 ほら、悪魔たちが俺に向かってくる音が聞こえてきた。


「前橋ぃぃぃ!!」


「お前まで女子とそんな事ぉぉぉぉ!!」


「沈めてくれるぅぅぅ!!」


 迂闊だったなぁ……。

 それを最後に俺の意識は消えていった。

 というか、なんか高城の様子変だったな。





「はっ!!」


「お、起きたか」


 気が付くと俺は砂浜に寝ていた。

 脇には英司がおり、眼の前では男子と女子が仲良くビーチバレーをしている。


「一体何が?」


「意識を失ってここで寝てたんだよ。うわ言でひたすら何かを謝り続けた時はもう流石にダメかと思ったが……」


「なんで俺がこんな目に」


「高城さんとイチャイチャしてるからだろ?」


「別にイチャイチャしてねぇよ!」


「いや、してたって。まぁでも高城さんには感謝した方が良いぞ? お前を男子の魔の手から助けたのは高城さんだからな」


「そうだったのか……俺はてっきりお前が助けてくれたのかと」


「あぁ、俺はお前の意識を奪った側だ」


「お前の意識も奪ってやろうか?」


 やっぱりうちの男子共は恐ろしいな。

 早く部屋に戻ってゲームをしよう。

 そう思って立ち上がると後ろから声を掛けられた。


「圭司君、よかった。目が覚めたんだ」


「あぁ、おかげ様でな」


 声を掛けて来たのは高城だった。

 両手に飲み物を持っており、片方を俺に手渡してくれた。


「はい、圭司君何も飲んでないでしょ?」


「あ、あぁ……ありがとう」


 なんだろうかこの違和感は……。

 いつも優しい高城がなんだかいつも以上に優しいぞ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る