第241話 海行くぞ07
「九条、お前には負けないからな!」
「野球部なんかに負けるかよ」
なんかこの二人の空気だけ他の奴らと違うな。
ちなみにスタートのコールはうちのクラスで一番真面目と言われる西雪(にしゆき)さんにお願いした。
「位置についてぇ……」
西雪さんがタオルを持って手を上げる。
スタートピストルなんて便利なものはないのでタオルを振り下ろしてスタートを知らせる。
「よーい……スタート!!」
西雪さんがそう言った瞬間5人の男子が一斉に走り出した。
目指すのは約50メートル先にあるビーチフラッグ。
やっぱり八代と九条が他の三人を引き離しており、勝負は二人の一騎打ちになっていた。
他の三人は最早諦めムードだ。
「あぁーやっぱり二人の一騎打ちだな」
「あの二人は男子の中でも運動出来る方だからねぇ……てかアンタは出ないの?」
「俺は別に優勝賞品に興味無いし、何だったらさっさと部屋に帰ってゲームの続きをしたいから出ない」
「海に来たってのにもったいないわね……折角だからもう楽しみなさいよ」
「疲れるだろ」
「土曜日のお父さんみたいなこと言わないでよ」
なんて井宮と話しをしている間に決着が付いたようだ。
どうやら八代が勝ったらしい。
「よっしゃぁぁ!! ヘッドスライディングは俺の得意分野なんだよ!」
「くそっ! まさか足が出ちまうなんて……」
九条、お前足で行ったのか?
ちょっとその瞬間見て見たかったかも。
これで八代が決勝に進出。
以外にも普通にビーチフラッグを楽しんでいるクラスの男子達に俺は少し驚いていた。
もっと汚い手を使って相手を陥れるかと思ったが、以外にも普通に楽しんでいる様子だった。
「はーい、続いて第二回選行きまーす」
結構普通に楽しんで終わるか?
そう思った俺だったが、まともだったのは最初だけだった。
「しねぇぇぇ!!」
「うわっ! て、てめぇ! 砂投げんじゃねぇよ!」
「っち! 外したか!」
「なら俺はこうだ!」
「あだっ!! お前ちょっと大きめの石投げたろ!!」
「だったら俺はこうだ!!」
「ば、ばか! 海パンを下げるな!!」
うわぁ……なんて酷い試合なんだろ……。
女子も若干引いてるよ。
こいつらのこういうところがモテない理由だろうな……。
「酷いわね」
「あぁ、分かってたけど更に酷いな」
「絵面が汚いってこういう時に使うのね」
「女子を見てみろ、汚物を見るような目で見てるぞ」
「これが男子と女子が仲良くなれない理由よね……」
そんなこんなで酷い試合ではあったが、なんだかんだで決勝グループの試合まできた。
最早女子は見る気無くして女子トークに華を咲かせているけど……。
「えぇ、それでは決勝を始めます! 皆さん正々堂々真剣勝負でお願いします」
「おう! 任せろ!!」
「じゃぁ、取り合えずその手に持ってる凶器を捨てろよ」
約一名、どこから持ってきたのかスコップを持っていたので回収した。
決勝に残ったのは八代と英司、そして陸上部の小野とバスケ部の飯島(いいじま)だった。
ちなみに凶器を持っていたのは英司だ。
「じゃぁ、時間もねぇしさっさと行くぞ西雪さんお願いします」
「はーい! 位置についてぇ……」
そう西雪さんがいった瞬間、女子の中から声が聞こえてきた。
「お、小野君! 頑張ってぇー!」
「え? あ、う……うん……」
顔を赤らめる二人。
そう言ったのは同じく陸上部の女子、大滝さんだった。
この二人、文化祭の後から確か仲良いんだよなぁ……。
「よーい、スタート!!」
そう言った瞬間、四人が一斉に走り出す。
しかし、走りだしたのは四人だけでは無かった。
小野と大滝の青春恋愛劇を見たクラスの男子達が小野を追って走り始めた。
「小野ぉぉぉ!!」
「てめぇ裏切ったなぁぁぁぁ!!」
「死ねやぁぁぁぁ!!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!!」
あぁ、やっぱり俺のクラスって変わってるわ……。
ちなみにビーチフラッグ大会は八代の優勝で幕を閉じました。
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