第238話 海行くぞ04

 てかなんでこの二人が部屋の鍵持ってるんだよ……。


「なんでお前らがここに?」


「笹原君にカードキーを借りたのよ」


 あいつめ……。


「んで何をしにきたんだ? 俺はこの海を眺めながら今から狩りに行くんだ」


「あのねぇ、海に来たんだからゲームなんかしてないで海水浴しましょうよ」


「いやだね、肌は焼けるし、疲れる。俺はエアコンの聞いた部屋でゆったりゲームがしたいんだよ」


「あはは、なんか圭司くんらしいね」


 幹事をしっかりやり遂げたんだ、ホテルでくらい好きなことをしたい。


「良いからいくわよ!」


「おい、離せ! なんで俺が真夏の海なんかに行かなくちゃいけないんだ!」


「女子がアンタの水着姿を待ってるのよ! アンタを連れて来るように頼まれてきたんだから大人しく来なさい!」


「ふざけるな! なんで俺がお前らの見世物になんなくちゃいけないんだ! それに俺の水着なんて見ても面白くねぇだろ!」


「あぁ、もうそう言うの良いから。いい加減来なさい!」


 井宮はそう言いながら俺からゲーム機を奪い取り、俺の手を引っ張って来た。


「離せ! 俺がインドアってことお前なら知ってるだろ!」


「知ってるけど、コッチだってもう貰うもん貰っちゃったのよ!」


「てめぇ買収されやがったな!!」


 なんてやつだ!

 一緒にイベントで騒いだ仲だというのに!!


「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いてよ!」


「優菜も手伝って! こいつ椅子にしがみついて離れない!」


「ぐぬぬぬぬ」


 俺は椅子だ、今俺は椅子と一体になっているんだ。

 絶対にここを動かない!

 そう、絶対にだ!!

 

「も、もう! いい加減にしなさいよっ!」


「え?」


「あ……」


 井宮がそう言って力を入れた瞬間、椅子が倒れ俺は井宮の方向に倒れた。

 

「だ、大丈夫! 二人とも!?」


「あ、あぁ……いてて……」


「あんっ……」


 ん? なんだ……なんか右手に柔らかい感触が……。


「え……」


「あ、あんたねぇ……」


「け、圭司君…あ…あの……」


 俺は自分の右手の所在を確認して顔をが青ざめるのを感じた。

 俺の右手はあろう事か井宮の水着の胸の中に飛び込んでいた。

 おいおい、俺の右腕さんよぉ……こういうラッキースケベは現実では死を招くからやめてくれ!!

 顔を真っ赤にしてこちら見る井宮。

 同じく顔を真っ赤にして口元を抑える高城。

 死を覚悟する俺。

 あぁ……マジでもう帰りたい……。


「いつまで触ってんのよぉ!!」


「あぐっ!!」


 俺は男の大事な部分を蹴り上げられ、その場にうずくまった。

 まさか息子をやりに来るとは……。





「ん? おぉ圭司、結局来たの……ってどうしたんだその顔? 腫れてないか?」


「あぁ……ちょっと事故がな」


 胸を触った罰として俺は砂浜に来てしまった。

 あえて海パンを持ってこなかったというのに、優秀な施設なのが逆に厄介だった、まさか利用者はレンタル無料だなんて……。


「はぁ……だるい」


「おい、何ビーチの視線を一人で独占してんだ?」


「してねぇよ」


 視線はめちゃくちゃ感じるけど。


「へぇ~前橋君って、結構腹筋すごいんだね」


「肌綺麗~どんなお手入れしてるのぉ~?」


「ねぇねぇ、一緒に写真取ろない?」


 女子からは囲まれて水着や身体の事をあれこれ言われるし。

 男子からは……。


「ねぇ前橋君、お兄さん達とスイカ割りしない?」


「じゃぁ君がスイカだ! 今埋める準備をするから待ってて!」


「はぁ……はぁ……前橋君……ちょ、ちょっと僕と二人で木陰に涼みに行かない? はぁ……はぁ……」


 色んな意味で恐怖を感じた。

 だから来たくなかったんだよ……。

 

「はぁ……やっぱり海は嫌いだ」


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