第233話 父さんはモテます
*
「い、いただきます」
「召し上がれ」
いつもの食卓に今日は二人家族以外の人間が居る。
気まずそうに食卓に座り、チラチラ俺の方を見ている井宮。
姉貴と先ほどからバチバチ火花を散らしている高ノ宮。
優しく微笑む母。
何も知らない父さん。
なんだこの気まずい食卓は……。
「今日は女性比率が高いな、なんだか父さん気まずい」
「あ、あぁ……そうだな」
「すいません突然……」
「いや、気にしないでくれ、丁度食材もたくさんあったから」
謝る井宮に父さんがそう返しながらエプロンを外して席に座る。
うちでの食事は基本父さんが作る。
昔から共働きだった父さんと母さんは家事を分担していた。
母さんはあまり料理が得意ではなく、洗濯や掃除などを担当し、父さんは前から趣味で料理をしていたため、家での料理が父さんの担当になった。
「あ、これ凄く美味しいです」
「ありがとう、そう言って貰えると嬉しいよ」
「それにしても美味しいですね、もしかしてお父さんの職業って料理人ですか?」
「いや、違うよ。これはただの趣味だよ」
「凄いですね、私なんて料理はからっきしで……」
「私も料理を趣味にし始めたのは大人になってからだ。だから今料理が出来なくても全然恥ずかしいことじゃないよ」
井宮は父さんとなんだか打ち解け始めている。
まぁ、元々父さんは家ではまともな人だし……問題は……。
「知与さん、いい加減気が付いたらどうですか? 貴女じゃ圭司君と結婚出来ません」
「何を言ってるの? それは法律の問題よ、大事なのは二人の気持ちなんだから」
「うふふ、気持ちもかみ合ってないと思うわよ知与」
この三人だ。
姉貴は元からヤバイのは分かっていたけど、母さんはナチュラルに地雷を落とすからな。
しかも高ノ宮はお隣さん。
何かあった場合後々お隣さんとの関係に問題が生じるかもしれない。
てか、度々娘が隣の家に行くのを高ノ宮の親御さんは不思議に感じないのだろうか?
「平斗、しばらく見ない間に随分モテモテだな」
「そう言う訳じゃないんだよ……」
正直否定は出来ないがこの状況でその質問はやめてほしい、いろいろ答えにくいから。
「若い時のパパそっくりねぇ~いっつも女の子に囲まれてたわ~」
「そんなことは無いと思うが?」
「嘘よぉ~……だって、私と付き合ってたのに毎日毎日他の子と仲良くしてたじゃない?」
あ、ヤバイ。
母さんの危ないスイッチが入ってしまった。
こう見えて母さん嫉妬深いからなぁ……。
「いや、そんなことは無かったと思うが」
「嘘よ、だって私と付き合ってるのに他の女と帰ったじゃない」
「いや、母さん以外の女性とは帰った覚えなんてない。まぁ、たまにストーカーが後をつけてくるからとかヤンキーに絡まれるからって理由で途中まで一緒に帰ったことはあったが?」
いや、それ多分全部嘘だよ。
父さん鈍感過ぎるよ。
そんな理由で一緒に帰ってくれなんて女子が男子に頼むわけないだろ!
頼んだとしても同性とかだよ!
「うふふふ……貴方は何年経ってもそうね、今の職場では浮気なんてしてないわよね?」
「いや、結婚してから俺は浮気なんてしていないが?」
「あらあら忘れたの? 10年前のあれとか6年前のあれとか」
あぁ、そう言えば小さい頃あったなぁ……。
なんか知らない綺麗な女の人が父さんを尋ねてきて、母さんがメチャクチャ怒ってたっけ。
その度父さん、母さんからボコボコにされてたっけ。
「いや、あれは浮気じゃない。あの子たちが勝手に」
「でも、貴方が無自覚に女の子を落として来るのが悪いんでしょ? ねぇ、今回は本当に大丈夫よね?」
「大丈夫かと言われてもなぁ……職場は男ばかりだし」
「職場での心配はないのよ、問題はプライベートで交友関係に新しく女性が追加されていないのかを聞いているのよ?」
「何を心配しているのか分からないが、最近は別に交友関係に変化は……あっ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます