第232話 なんで親の前で恋バナなんて……
*
修羅場という言葉と自分は無縁でありたいと願っていた。
しかし、悲しい事に俺は今修羅場の中に居る。
現在俺の部屋には井宮、高ノ宮、そして姉貴と母さんがいる。
いや、なんで母さんまで……。
「あらあら、圭司もパパに似てモテるのね」
「お母さん! 今はそんな事を言ってる場合じゃないわ! 早くこの泥棒猫二匹を家から追い出さないと!」
「なんでかしら、私はこの子達よりも知与を追い出した方が圭司に良い気がするわ」
あの後、窓から様子を見ていた高ノ宮まで家に来て予想通り面倒な事になった。
「圭司君? なんで井宮さんと部屋で二人なの? なんで私のベッドに他の女が寝たの?」
現状一番怖いのは高ノ宮だ。
なんかいつも以上に言葉に棘があるし、何を考えてるのかマジで分からない。
いや、まぁ何となく分かるけど……。
「高ノ宮、別に俺は井宮と何かいかがわしい事をしていた訳じゃないぞ? ただ普通に家でゲームをだな……」
「高校生の男女が部屋で二人きりでゲームをするのは普通じゃないと思います」
いや、普通だろう。
友達とゲームをするなんて良くアニメなんかで見るぞ!
そう言おうとしたのだが……。
「そうよ普通じゃないわ!」
「そうねぇ、お母さんもそう思うわ」
「え!?」
姉貴はともかく母さんにもそんな事を言われるなんて……。
あれ?
おかしいのは俺なの?
てか、なんで俺の部屋に全員集まってるんだよ!
狭いわ!
せめてリビングに移動するとかしてくれ!
いや、本当は全員帰って欲しいけど!
「はい、お母さん質問があるんだけど良いかしら?」
「なんだよ……」
「一体どっちが圭司の彼女なの?」
「ぶっ!!」
この母親は地雷しか踏まないのか……。
「何を言ってるのお母さん! 圭ちゃんの彼女は生まれた時から私って決まってるでしょ!」
「うん、とりあえず知与の育て方を間違えた事がお母さん痛いほどわかったわ」
「そんなの私に決まってますよ! 圭司君とは中学からの付き合いですし、それにもう告白だって……」
「振られたんでしょ」
「なっ!! そ、それは……」
得意げに話す高ノ宮に井宮が呆れた様子でそう言う。
あぁーこいつらまた喧嘩しはじめないだろうな……。
俺がそんな事を考えながらひやひやしていると、母さんは井宮の方を見て尋ねた。
「貴女は?」
「え……」
「私はてっきり貴女が圭司の彼女だと思ってたんだけど? だって今日も一緒に出掛けてるし、一緒に部屋に居るし」
「い、いや私は彼の趣味友達と言いますか……」
「そうなの? 今朝は圭司すごく楽しそうだったからてっきり……」
「え?」
やめてくれ!
そんな顔で俺を見ないでくれ!
そうだよ!
イベントが楽しみ過ぎてわくわくしてたんだよ!
でも、この状況でそんな話しをしたら、俺が井宮と出掛けるのを楽しみにしてた見たいじゃないか!!
「へぇ~そうなんですか~ふーん……」
高ノ宮はなんか死んだ目で俺を凝視してくるし……。
「お母さん私ちょっと市役所に行って来る」
「何しに行くの?」
「婚姻届け貰って来る!」
「そろそろ市役所閉まる時間よ」
「じゃぁ、ゼ〇シィの付録で!」
「書いたところで受理されないわよ」
姉貴はとち狂った事を言い始めるし。
なんでも良いから全員出てけよ……。
しかし、そんな俺の思いとは逆に母さんがとんでもない事を言い始めた。
「そうだ! 今日はパパが帰ってきてるから、二人ともご飯食べていかない? うちのパパのご飯凄く美味しいのよ」
なんでこの空気でそんな話しが出来る!?
いや、俺は絶対に嫌だぞ!
この気まずい空気の中で食事なんかしたら、父さんの料理がまずくなる!
ちなみに父さんの料理はマジで美味しい。
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