第231話 イベント行きます4

 親父から渡された物は避妊具、いわゆるコンドームだ。


「おい!」


「どうした? それと父さん今から三時間くらい出掛けるから」


「変な気を使うな!」


「彼女だろ?」


「ちげーよ! ただの友達だ!」


「なんだ、そうなのか」


 正直言って親父は天然だ。

 恐らく親父は100%善意で俺に避妊具を渡したのだろう。

 しかし、その善意が今は非常に迷惑だ。


「わ、悪いうちの親父が……」


「だ、大丈夫よ……気にしてないわ」


「じゃぁ、なんでそんな距離を取るんだよ」


 親父もあの天然さえ無ければなぁ……。


「てか、アンタのお父さんかなり若いわね、この前お母さん見た時も思ったけど、二人ともいくつ?」


「40代前半」


「うちの両親とは大違いね、20代かと思っちゃった」


「まぁ、親父もお袋もかなり顔立ちが良いからな」


 子供の俺が見てもそう思う。

 昔から授業参観なんか両親が来ると騒ぎになっていた。

 確か一回親父がクラスメイトのお母さんに本気で惚れられて大変だったなぁ。

 父さんは天然だから、惚れられた事にも気が付いてなかったけど。

 あの時の母さんは怖かった。


「なるほど……あの二人からアンタが生まれたのは納得だわ」


「何の話しだよ、それより早くゲームしようぜ!」


「分かってるわよ!」


 その後、俺たちは先ほどの親父のやらかしを忘れ二人でゲームを楽しんだ。

 気が付けば井宮は俺の部屋で思いっきりくつろいでおり、俺のベッドで横になりながらゲームをしていた。


「あ、ドロップしない! なんでよぉ~!」


「ドンマイ、俺はもう三個目」


「なんでよぉ~なんで欲しい私のところに出てくれないのよぉ~」


「物欲センサーが発動してるな」


「うぅ~もう一回行くわよ!」


「はいはい」


 なんて会話をいしながら気が付けばもう夕方の17時を回っていた。

 

「お、もう17時か」


「え、本当? うわっマジじゃん! ゲームやってると時間の感覚おかしくなるわよね?」


「まぁな、お前もう少し大丈夫か?」


「大丈夫だけど、流石に19時には帰らなくちゃ」


「まぁ、そうだよな……」


 なんだろうな、今まで誰かと一日中ゲーム三昧みたいな事をした事が無かったのだが……。

 案外悪くないな。

 というか、それがもう終わりを向かえると思うと悲しいものだ。

 なんて事を考えていると……。


「圭ちゃ~ん! お姉ちゃん帰ってきたわよぉ~! さぁ、疲れたお姉ちゃんを癒し……て……」


「あ……」


 やっべ……もう帰ってくる時間だった。

 しかも部屋に井宮が居るうえに俺のベッドの上で寝転がっている。

 この状況は非常にヤバイ……いままでこんな事なかったから姉貴が一体どんな反応をするか……。


「圭ちゃん?」


「な、なんだよ?」


「なんかね、お姉ちゃん疲れてるみたい……圭ちゃんの部屋に井宮さんが居るように見える」


「姉貴、大丈夫だ。姉貴は正常だ」


「お、お邪魔しています……」


 井宮がそう言うと姉貴はようやく気我に返ったようだった。

 不自然なくらいの笑みに背後から流れですどす黒いオーラ。

 めっちゃ怒ってるなぁ~。


「井宮さん、男の部屋に何の躊躇もなく入るなんてダメよ? ビッチと誤解されるわよ」


「なっ! 別に躊躇が無かったわけじゃないです! 貴女もそろそろ弟離れしたらどうですか?」


「離れるわけないでしょ? だって私と圭ちゃんは将来を誓いあった仲なんだから」


「誓ってねぇよ」


「とにかく! 圭ちゃんのことはさっさと諦めなさい! 圭ちゃんには美少女のお姉ちゃんが居るんだから!」


「自分で美少女とか言わんでくれ……」


 こっちが恥ずかしくなってくる……。

 はぁ、もっと早くに気が付くんだった、姉貴が来る前に井宮を帰しいればこんな面倒なことには……。


「………」


 そう思いながら窓を見た瞬間、隣の家の高ノ宮と目があった。

 心の中で俺は更に面倒な事になると確信した。


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