第230話 イベント行きます3

 ステージイベントに限定グッズ販売など、俺たちはイベントを楽しみまくった。

 

「やばいな、まさかここまで面白いとは……」


「やばいわね……胃が付いたらもう財布の諭吉が何枚か家出してたわ」


「それは使っただけだろ」


 楽しい時間というのはあっという間に過ぎてしまう。

 誰かと出かけてここまで楽しいと思ったのは始めてかたもしれない。

 

「はぁ~あ、もっとお金持ってくればよかった」


「使いすぎも良くないだろ? あとはグッズ買って帰ろうぜ」


「まぁ、そうね。はしゃぎ過ぎて疲れたし」


 入場から二時間、俺たちはイベント会場の隅から隅までを見まくった。

 しかも二人とも興奮状態だったので気が付かないうちにかなり体力を使っていた。

 まさか疲れを忘れてここまではしゃぐとは思わなかった。


「さーて、いろいろ買ったけど最後に何か記念になる物が欲しいわね」


「記念ねぇ……あ……」


「何かあったの?」


「あぁ、まぁな……お前は?」


「私は会場限定のコントローラー買って行こうかなって」


「マジかよ、お前一体いくら持ってきたんだ? また財布から諭吉が出て行くぞ」


「はぁ……まさか四人も諭吉が家出するなんて」


「そんなに持ってきたのかよ!!」


 こいつは一体どこからそんあ大金が出てくるんだ?

 家にもパソコン二台もあったし。

 お互いに買い物を済ませ、俺たちは名残惜しかったが会場を後にした。


「はぁ~楽しかった~!」


「やっぱり良いもんだなぁ~こういうイベントは」


「でしょ? 今度また別なイベントにも一緒に行こうよ!」


「おう! あ、でも金に余裕あるときな」


 そうじゃないと直ぐに破産しちまう。

 こりゃあ、夏休み開けもバイトをすることを考えた方がよさそうだ。

 

「なんかゲーム見てたらゲームしたくなって来たわね」


「じゃぁ俺の家来てゲームするか? 丁度会場で新作買ったし」


「良いわね! 本体持ってきて良かった、じゃあ前橋の家で戦利品の開封とゲームプレイしましょうか!」


「確かのこの新作序盤から協力プレイ出来たよな!」


「今日中にクリア出来るかもしれないわね!」


「よし! さっさと帰ろうぜ!」


 この時の俺はイベントのハイテンションのままに深く考えずに井宮を家に招いた。

 いつもの俺なら家に誰か居るかとか、姉貴が居ないとか考えるのだが、この時はあまりの興奮でそんなことを全く考えて居なかった。

 なので、俺は忘れていた。

 今日はあの親父が家に居ることを……。


「ただいま」


「お邪魔しまーす」


 俺は何も考えずに井宮を家に連れて帰ってきた。

 そして俺と井宮が家の中に入った瞬間、リビングから親父が顔を出した。


「お、圭司。おかえり」


「あ……」


「え?」


 帰ってきた俺に親父は無表情でそう言った。

 私服姿だが服装はキッチリしており、眠たそうな目で俺と井宮を見つめる。

 容姿は同性から見てもイケメンだと言われるほど親父の顔立ちは良い。

 しかももう40を過ぎたというのにスラっとしていてスタイルも抜群だ。


「なんだ、彼女か?」


「親父、帰ってたのか」


「あぁ、母さんが帰って来いっていうからな、夏休みを会社から貰ったんだ。それよりその子は彼女か?」


「違うよ、友達だって。部屋に居るからなんかあったら言ってくれ、母さんと姉貴は?」


「二人で買い物に行った」


「置いて行かれたのね」


「あぁ、せっかく帰ってきたんだが……」


 寂しそうな顔をする親父をよそに俺は井宮を連れて部屋に行こうとする。


「お、お邪魔します……」


「あぁ、ゆっくりしていってねお嬢さん」


「は、はい……」


 正直俺は家族の中で親父が一番好きだ。

 必要以上の詮索はしないし、うちの女性陣と違ってわーわー騒がない。

 なのだが……。


「あ、圭司」


「ん? なんだよ」


「一応これを渡して置く」


「え? 一体なに……」

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