第229話 イベント行きます2

「暑い……」


「頑張りなさい、もう少しでエアコンガンガンに聞いた開場に入れるから」


「でも、この人だぞ? 絶対中も暑いだろ」


「直射日光が無いだけマシよ」


「確かにそれは言える……」


 お互いに汗を流しながら、俺達は開場を待った。

 井宮は汗を掻くたびにタオルで拭いたり、制汗シートで汗を拭いていた。

 女子だから汗の匂いとか気になるのだろうか?

 でも、こいつ汗かいててもなんかいい香りするんだよなぁ……なんでだろ?

 というか、もしかして逆に俺が臭い?

 俺もスプレーしとこ……。


「スプレー持ってきてたの?」


「あぁ、汗臭いのは嫌だろ」


「まぁね、後で私にも貸して」


「え? まぁ良いけお前は必要ないだろ?」


「なんでよ?」


「いや、もういい香りなんだからっていでっ!」


「な、何人の身体の匂い嗅いでるのよ! 変態!」


 思いっきり足を踏まれてしまった。

 別に臭いと言った訳ではないのだが……。

 もしかして暑さでイライラしてるのか?

 そんな事をしていると、とうとう開場の時間になり列が動き始めた。


「おぉ! やっと入れるぞ!」


「さぁ、気合入れて行くわよ!」


「分かってる! よしいざ!!」


 俺と井宮は意気込んで開場の中に入って行く。

 中はまるで夢のような空間だった。

 

「井宮! あれ見ろ! 鉄骨の最新作だ!」


「え! あれってまた新しいの出るの!?」


「あそこにはドラゴンハンターの最新作のデモプレイ映像が!」


「マジで! 武器とか増えてる? 新しいドラゴンは!!」


 俺達は我を忘れてイベントを満喫した。

 展示物を見るたびに二人で写真を撮り。


「やばいわぁ~、実寸大の武器とか男心をくすぐるわ~」


 カシャカシャ


「すごいわねぇ~何この作り込み、やばくない?」


 カシャカシャ


「てか、井宮写真しか撮ってなくね?」


「アンタもでしょ?」


 コスプレイヤーと遭遇しても写真を撮り。


「きゃー! ダークエッジのユーイちゃんのコスプレ!! しゃ、写真撮っても良いですか?」


「はーい、良いですよぉ~」


「めっちゃ可愛い~、前橋! 写真お願い!」


「次は俺だぞ!」


 カシャリ。

 交代で写真を撮って貰い俺達はレイヤーの女性にお礼をいう。


「どうもありがとうございました」


「はぁ~可愛い~凄い作り込みですね」


「うふふ、全部手作りだからね」


「手作りって……一体どれだけ時間が掛かるんだ」


「いいなぁ~私もコスプレとかして見たいけど、どうせ似合わないし……」


「あらそう? 貴方スタイルも良いからきっと似合うわよ。彼氏さんもそう思うでしょ?」


「え?」


 あぁ、そうか第三者にはそう見えるのか。

 説明する必要もないが、一応訂正しておくか。

 

「いやお姉さん、実は俺達ただのゲーム仲間なんですよ。な?」


 そう言って俺が井宮の方を見ると、井宮は顔を赤く染めながら頬に手を当てて何やらぼーっとしながらブツブツ何かを呟いていた。


「おい、おい! 井宮?」


「え? あ、あぁごめん」


「どうした? もしかして今更熱中症か?」


「な、なんでもないわよ!」


「ふぅ~ん、なるほどねぇ~。若いって良いわねぇ~」


「はい?」


 コスプレのお姉さんはそう言って俺達の前を離れて別のお客さんの所に行った。

 

「いやぁ~クオリティーやばかったな」


「そ、そうね……」


「しかし、あの露出の多い恰好は恥ずかしくないだろうか?」


「ど、どうかしらね?」


 なんか急に口数が少なくなったな、一体どうしたんだ?

 やっぱり暑さで具合が悪くなったのか?


「大丈夫か? 具合が悪くなったら直ぐ言えよ?」


「だ、大丈夫よ! さ、さぁとっと次行くわよ!」


「あ、あぁ……」


 顔真っ赤だけど大丈夫なのか?




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