第225話 ようこそ前橋家へ
*
「てなわけで、当分は夜中までゲームは出来ねぇ」
『そう、アンタの家って両親そんなに家に居ないんだ』
「まぁ、二人とも忙しいからな」
夜になり、俺は自分の部屋に戻り井宮に電話を掛けていた。
夏休みになり明け方までゲームをする俺だが、流石に母さんがいる間は規則正しい生活を送らないとパソコンやゲームを取り上げられてしまう危険性もある。
それだけはなんとしても阻止しねばならん。
「てか、そろそろイベントも近いし、明日辺りでも打ち合わせしないか?」
『そうね、何時に駅集合とか色々決めないと行けないしね、じゃぁいつものファミレス?』
「そうだな、明日の昼でも良いか?」
『良いわよ、遅れないでちゃんと来なさいよ』
「分かってるよ」
このために俺は井宮に勉強を頑張らせたのだ。
年に一度開催されるゲームやアニメのイベント。
このイベントに一度は行ってみたいと思っていたが、生憎一人で行くには勇気がいる。
しかし、今年は井宮と一緒だ!
不安なことなど何もない!
憧れのイベントで文化祭の賞金とバイト代を使いまくる!!
「いやぁ~楽しみだなぁ~」
しかし、母さんは一体いつまで休みなのだろうか?
ゲームの夏イベントも周回したいし、出来れば早めに仕事に戻って欲しいのだが、母さんにも休みくらい必要だからな。
「仕方ない、今年の夏イベは最終日に徹夜でなんとかしよう」
*
翌日、俺は約束通りに井宮と待ち合わせをしたファミレスに向かった。
しかし、ここで予定外の問題が起きてしまった。
「水道管破裂のため、臨時休業!?」
「そうなのよ、ドアに張り紙出てたのよ」
「ま、まじか……」
なんと行きつけのファミレスが休みだったのだ。
しかも今日はかなり暑い。
外に出ただけで汗を掻いてしまうほどだ。
俺達は近くのコンビニに避難して暑さから逃れていた。
「しかしどうする? 別なファミレス行くか?」
「今地図見たけど、こっからだと近くても歩いて20分以上掛かるのよ」
「まじか……こんな暑さの中20分とか地獄じゃねぇか」
「どうする? このままコンビニに居ても仕方ないし……」
「そうだな……」
ここから近くて、座れてなおかつ長時間滞在しても文句の言われない場所は……。
「あ、うち来るか?」
「え?」
考えて見れば井宮の家にはお邪魔したが、井宮を俺の家に呼んだことが無かった。
確か姉貴は今日も撮影だし、母さんは友達と飯に行って買い物もしてくるって言ってたし。
「い、良いの?」
「あぁ、前にお前の家に行ったし、それに今日俺の家誰も居ないからな」
「そ、そう……」
そうと決まれば、飲み物とかお菓子も買っていこう。
丁度コンビニに居ることだしな。
「飯も買っていこうぜ、俺朝食ってねぇから腹減っちまった」
「あ、じゃぁ私これにしよ、気になってたのよ」
「おまえ女子なのに油こってり味噌ラーメンって……」
「何よ、悪いの?」
「いや、別に……てか一口くれ」
「アンタも食べたいんじゃない!」
コンビニで買い物を済ませた後、俺達二人は家に向かって歩き始めた。
歩いて10分程で俺の家に到着、俺は玄関の鍵を開け井宮をリビングに通した。
「エアコン今から付けるから少し我慢してくれ」
「えぇ、ありがとう」
エアコンの電源を入れつつ俺はキッチンでやかんに水を入れてお湯を沸かし始める。
「アンタ、そう言えばお母さん帰って来てるんでしょ?」
「あぁ、そうだけど?」
「どんな人? 写真とかないの?」
「別に普通だよ、写真見たって面白くないぞ」
「良いじゃない、ちょっと気になるのよ」
「じゃぁ後で見せてやる、言っとくけど面白くなくても文句言うなよ」
「言わないわよ。それにしてもアンタの家って綺麗ね、ちゃんと掃除されてるし……」
「そうか?」
「そうよ、ビックリしたわ。普段からこうなの?」
「汚い部屋が嫌いだからな」
どうでも良い話しをしながら、俺達はコンビニで買ってきた昼食を食べる。
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