第224話 育て方を間違えたかしら?

「でも安心したわぁ~圭司はずっと家でゲームばっかりしてたから」


「それは今もですけどね」


「おい、余計な事を言うなよ」


 うちの両親は結構厳しい。

 一日中ゲーム三昧なんて聞いたらパソコンとゲームを取り上げられるかもしれない。

 

「んじゃあな」


「おう、またな」


「気を付けて」


 少し歩いて、俺は英司と最上と別れた。

 帰り道、久しぶりに母さんと二人きりになった。

 

「圭司、学校は楽しい」


「まぁまぁ」


「そう? なんだか楽しそうに見えるけど?」


 どこが楽しいんだあんな場所。

 変わった奴が多いし、幹事をやらされたり大将をやらされたり散々だ。

 お袋は何も知らないからそんな事が言えるのだろうな。

 

「うふふ、高校に入ってから圭司はなんだか生き生きしてるわね」


「そう?」


「えぇ、たまに帰って来て顔を見れば分かるわ。それに芸能事務所に入るだなんて聞いた時にはお母さんビックリしちゃったわ」


「あれは事情が事情だったんだよ」


「あら? 昔の圭司ならどんな事情でも俺には関係無いって、面倒事には首を突っ込まない主義じゃなかった?」


「……いろいろあったんだよ」


 お袋に隠し事は難しいらしい。

 流石は俺の母親だ。


「まぁ、知与ちゃんが事務所に入った時から、ゆくゆくは圭司も入るもんだと思っていたけど、まさか自分から入るとはねぇ~」


「………姉貴は顔が良いからな」


「圭司も負けてないわ。パパそっくりよ」


「……俺は不細工だよ」


「まだ、そうやって自分に言い聞かせてるの?」


「………」


「そろそろ認めて前に進みなさい、今のお友達はきっと小学生の頃の子達とは違うわ」


「………」


 きっとそうなのだろう。

 俺も心の中ではそうだと理解している。

 しかし、あのトラウマは簡単には消えない。

 

「さて、今日は久しぶりにママが美味しいご飯を作ってあげるわよ!」


「アートみたいな飯が出来ちまうから勘弁してくれ」


 お袋と話しをしているうちに家に到着した。

 料理をするなどという、いつもは料理をしない母親に俺はため息交じりにそんな事を言いつつ玄関のドアを開ける。


「圭ちゃんお帰り~! ご飯にする? お風呂にする? それともお・ね・え・ちゃ・ん?」


 そう言って出迎えたのは裸エプロンの姉貴だった。

 ドアを開けたのが俺だったから良いが、別な人だったらどうするつもりだったんだ?


「相変らずみたいね知与ちゃん」


「え!? お母さん!! なんでお母さんが居るのよ!」


 久しぶりにあった我が子のみっともない姿に母さんは深くため息を吐く。


「はぁ……なんでこの子はこんなにブラコンなのかしら……圭司、大丈夫? まだ童貞?」


「なんとか守ってるよ」


「よかった、まだ知与ちゃんは一線を越えてないのね」


 そんな心配なら姉貴をどっか別の家に住まわせてくれ。

 家に居て貞操の危機を感じるなんてまっぴらだ。


「もう! これから夏休みで圭ちゃんと暑い夏を一緒に過ごせると思ったのに!」


「一体どんな夏を過ごそうとしてんだよ」


「我が子ながら恐ろしいわ……どうしてうちの子達は顔は良いのにこんなに残念なのかしら?」


 なんて話しをしつつ俺たちはリビングへ。

 姉貴は着替えに部屋に戻った。


「えぇぇ!? お母さん当分家にいるの!!」


「えぇ、仕事もひと段落だし、早めのお盆休みね」


「そ、そんなぁ……お母さんが居たら……圭ちゃんの部屋に忍び込んで夜這いを掛けられないじゃない!!」


「母さん出来ればずっといてくれ、俺はこの姉と一緒に生活するのが不安になってきた」


「本当に大丈夫かしら? うちの娘……」

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