第221話 執事からの怒り
大きなトラブルもなく、俺達のバイトは最終日を向かえた。
「今日で終わりか、四日間ってのも意外と早いな」
「良い社会勉強になったな、働くというのは大変なことだ……」
「そうだな、労働はクソだ」
「君はそもそも働くのが嫌なんだね……」
はぁ、学校を卒業して社会に出たらこんなクソな労働に毎日従事しなくちゃいけないのか……働かなくていい方法とか真面目に考えてみようかな……。
「まぁ、とりあえず今日でバイトも最後だしさっさと終わらせて給料を貰おう」
「今日も何事も無く終ると良いな」
「何もないだろ? さっさとホール行くぞ」
俺と最上は何気に店では人気の執事になっていた。
俺達目当てで毎日来る客も居るくらいだ。
一方で英司はと言うと……。
「ん! このオムライス美味しいね」
「最近この店料理も美味しくなってよね?」
「なんでだろ? 厨房の人も変わったのかな?」
この四日間で料理スキルを伸ばしていた。
本人いわく、今なら目を瞑ってでもこの店のメニューを作れるとか。
「おい圭司、これ三番のお嬢様にな」
「あいよ、お前の料理人気だぞ」
「ふっ……まぁな!」
「お前その道で食って行けば良いんじゃね?」
「それは最近真面目の考え始めてる、まさか俺に料理の才能があったとは……」
「まぁそれ以外は何も無いけどな」
「あぁ!? てめぇ喧嘩売ってんのか?」
「悪かったよ、じゃぁこれ貰って行くぞ」
店長からの評判も良く、俺達三人はこれからも働かないかと誘われているが働く気はない。
だって、ゲームする時間無くなるし。
このまま順調にバイトは終わりを向かえる……はずだった。
「いらっしゃいませ、お嬢さ……」
「「え?」」
「………あ」
井宮と高城が来るまでは……。
「お嬢様、お帰りはあちらです」
「いや、待ちなさいよ。アンタこんなとこで何してんのよ……ふふ」
「おい、笑ってんじゃねぇ」
「ダメだよ椿ちゃん! 笑ったら……ふ……ふふふ」
「高城、お前は言ってる事と行動が伴ってないぞ」
最悪だ。
バイト中学校の奴らが来なくて良かったと思っていたのに、まさか最後の最後でこいつらが来るなんて!!
くそっ! 油断してた……。
「どうしたんだ親友? む、おぉ! 高城さんと井宮さんじゃないか」
「あ、最上君」
「アンタもここでバイトしてるの?」
「あぁ、今日で最終日だけどね。それにしても君たち二人がこの店に来るなんて以外だよ」
「私は優菜に誘われたのよ」
「ここ、最近料理とスタッフのクオリティーが上がったって聞いたから」
「そうか、じゃぁもう帰れ」
「客に対してその態度はどうなの? し・つ・じ・さん?」
「くっ……」
井宮の野郎……完全に面白がってやがる。
まぁ知り合いがもしかしたら来るかもという恐怖はあったが、よりによって一番近しいこの二人が来るとはな……。
俺は二人を席に案内した。
「んで? お前ら注文は?」
「え? ここって執事喫茶だよね? ちゃんとお嬢様って呼ばないとダメなんじゃない?」
「くっ……」
井宮め、完全に調子にノリやがって……。
しかし、バイトも今日で終わりだし、最後の最後で問題を起す訳にはいかない……。
「お嬢様、本日は何になさいますか?」
「ぷっ! ふふふ……じゃ、じゃぁ……私はアイスティー……ふふ」
自分で言わせておいて何笑ってんだこの野郎!
絶対に後で文句言ってやる!
「そちらのお嬢様は?」
「じゃ、じゃぁ私はこれを……」
「か、かしこまりました……」
高城は高城であんまり復唱したくないメニューを頼みやがって!!
「あ、あの復唱をお願いします……」
くそっ!
復唱無視しようと思ったのに!
仕方ない言うしかないか。
「えっと……アイスティーが一つと……ひ、執事からの甘い一時が一つでよろしいでしょうか?」
「ぷっ! あ、甘い一時って……あははは!」
「は、はい大丈夫です! うふふ」
マジで二度とやんねーこのバイト!!
てか誰だ!
こんな馬鹿な名前のメニュー考えた奴は!
そんな事を考えながら、俺は英司の元に行きメニューを伝える。
「オーダー、執事からの怒りが二つで」
「そんなメニューはないぞ、一体に何があった?」
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