第219話 現状で彼女は一番……いや、なんでもない。
「ん……はい……結婚します」
一体どんな夢を見ているんだか……結婚報告の記者会見の夢でも見てるのか?
「はい……彼はゲームが好きで……」
ゲーム好きと結婚するのか、一体誰だろうなその男は、きっと世の男性から羨まれるぞ。
俺が勧めたのが切っ掛けでゲームにハマって、プロゲーマーとイベントで知り合って結婚見たいな流れか?
今時はあるからなそう言う流れ……。
「はい……今度からは……前橋になります……」
前橋?
あぁ、結婚したあとの苗字ね。
前橋さんと結婚するのか……。
いや、俺やん。
絶対俺やん。
どんな夢見てんだよ。
どんだけ俺の事好きなんだよ。
こっちまで恥ずかしくなってきた……。
「はぁ……」
俺はそんな川宮さんに自分に掛かっていたタオルケットを掛ける。
「全く……」
もっと良い人が回りにたくさん居るだろうに……。
俺はそんな事を考えながら川宮さんが起きるまでスマホでソシャゲをして時間を潰した。
それから約一時間後。
「ん……あれ? ……寝ちゃってた?」
「おはようございます。お疲れだったのは川宮さんも見たいですね」
「ん……ふあ~あ……なんか凄く良い夢を見た気がする……」
「それは良かったですね」
「もう17時なんだ……はぁ~あ、あっという間に休日が終って行くなぁ……」
「まだ終って無いでしょ?」
「終わりじゃん、どうせ圭司君ももう帰っちゃうだろうし……」
「別に帰るなんて行ってないでしょ?」
「え?」
「飯くらい付き合いますよ」
そう言うと川宮さんの表情はぱぁっと明るくなり、嬉しそうに立ちあがった。
「それじゃぁ買い物行こ! 私がご飯作ってあげる!」
「川宮さんは料理出来るんですか?」
「私だって一人暮らししてるんだよ? 料理くらい楽勝だって!」
なんて自信満々に言うものだから、俺は川宮さんに任せることにして一緒に買い物に行ったのだが……。
「あの……いつもこんなのばっかり食べてるんですか?」
「え? そうだけど?」
川宮さんが買い物カゴに入れていくのはレトルト食品や冷凍食品ばかりだった。
しかも、唐揚げや餃子などの高カロリーな物ばかり。
「……世のファンが見たら泣きますよ」
「え!? なんで? 別に普通じゃない?」
「いや、悪いとは言いませんけど……なんでそんな可愛い顔して食ってる物が体育会系なんですか……普通に体に悪いですよ」
「そ、そんなもう~可愛いだなんてぇ~」
「反応するのはそこかよ……はぁ、仕方ないか、今日は俺が作ります」
「え? 良いの? てか、なんか今日の圭司君いつもより優しくない?」
「……まぁ……結構楽しかったので……」
「え?」
「ほら、まずはこの冷凍食品の山を戻してきますよ!」
「あぁん、ちょっと待ってよぉ~!」
その後、俺たちは材料を買って川宮さんのマンションに戻り夕食を作って食べた。
「圭司君お料理まで出来るなんて……一体私をどれだけ惚れさせれば気が済むの?」
「そう言う貴女は俺を好きと言いながらも、一向に振り向かせる努力をしませんね」
「し、してるよ! あの……い、色仕掛けとか!?」
「別な方向で頑張ってもらえます?」
まぁ、川宮さんのことだ。
いままで告白されたことや好意を持たれたことはあっても、拒絶されたりとかの経験はないのだろう。
だから、自分を好きになって貰うにはどうしたら良いのかわからないのかもな。
「ね、ねぇ……あのさ……やっぱり私って圭司君から見たら魅力ないのかな?」
「………そんな事ないですよ」
「じゃ、じゃぁなんで付き合ってくれないの?」
「……俺には貴女はもったいないので」
「そんな事無いのに……」
いや、十分そんなことはあると思う。
俺のように色々と面倒な奴よりも素直に川宮さんを愛してくれる人は恐らく他にいる。
「ま、それでも諦めないけどね!」
「……それは光栄なことで」
「………ねぇ、キスし……」
「だめです」
「まだ言い切って無いのに!!」
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