第216話 店員さん話し掛けないで!!
「まぁ、強いていうなら自分にはもったいないと思ったので」
「そうですかね? お似合いだと思いますけど」
流石はアパレルショップの店員さんだ、お世辞なのにお世辞に聞こえないほど自然だ。
まぁ、釣り合いが取れないのは自分が良く分かってるからな……。
「でも、大事なのはお二人の気持ちじゃないですかね?」
「は、はぁ……」
だからなんでこの人は俺と川宮さんの事情に首を突っ込んでくるんだよ!
もうそろそろ業務に戻らないと怒られるぞ!
「私思うんですよ! 服には似合う似合わないってあるんですけど、恋愛は似合う似合わないなんて基本無いと思うんです! 大事なのはお互いがどう思っているかなんですよ!」
「店員さん良いこと言いますね! 私もそう思います!」
「伊達に23年生きてませんから!」
へぇ~この店員さん23なんだ。
大学卒業して就職した感じかな?
ここまでいうんだから、きっと恋愛経験も豊富なんだろうな。
「まぁ、彼氏なんて居た事ないんですけどね!」
いないのかよ!
それで良くあんなに色々言えたな!
「えぇ、そうなんですか! 絶対居ると思ったのに……」
「覚えておきなさい、見た目だけ取り繕っても彼氏なんて出来ないのよ……」
あ、なんか今の話しだけ凄い説得力を感じた。
過去にきっと何かあったんだなこの人。
「まぁ、そんな話しは置いておいて! お嬢さんこちらのワンピースなんて爽やかで良いですよ! きっと彼のハートも一頃です!」
「いや、貴女さっき見た目だけ取り繕ってもとか言ってなかった?」
「あ、でも可愛い。試着してみます!」
川宮さんは店員さんからワンピースを受け取り、試着室の中に入って行った。
「いい子じゃないですか、なんで付き合わないんです?」
しつこいなこの人!
「俺はあの人に恋愛感情を抱いていません。それなのにお情けで付き合ってもきっとあの人だって喜ばない。だからですよ」
「なるほど、でも自分の為に可愛くなろうとしているんですよ? 可愛いくらいは言ってあげても良いんじゃないですか?」
「いや、あの人が可愛いのは十分知ってるんで、どうせさっきのワンピースだって似合ってますよ。そんな分かり切った事を何で言わないといけないんですか?」
俺がそう言うと店員さんはニヤニヤしていた。
何がそんなにおかしいんだ?
てか、そろそろこの店員さんの言動を店に報告しても良いだろうか?
なんて事を考えていると、試着室のカーテンが開き顔を真っ赤にした川宮さんが勢いよく出てきた。
「こ、これ買います!!」
「ありがとうございま~す」
「え? でもまだ着てないんじゃ……」
「ううん! 買う! 今まで試着したのも全部買う! ほ、ほら私お金あるから!」
「なぜ唐突に金あるアピール?」
そんなこんなで川宮さんは大量の服を購入した。
なんで急に購入を決めたのだろうか?
謎だ……。
「良い店員さんだったね!」
「そうですか?」
普通に失礼な店員だと思ったが……というか眠いなぁ……。
「ふふふ……可愛いのは十分知ってるんだ……うふふ」
「何急に笑い始めてるんですか……気持ち悪いですよ」
「あぁ、ごめんごめん。さて次は圭司君の行きたいとこに行こうか!」
「俺の行きたい所ですか?」
行きたい所か……今は自宅のベッドだが、どうせ却下されるだろうし、ここは前々から行こうと思っていたあそこに行くか。
「じゃぁ、少しだけ付き合って貰って良いですか?」
「うん! どこに行くの?」
「ゲームショップっす」
夏発売のゲームで気になってるのが数本あるし、丁度良いから見て行こう。
それにコントローラーも壊れてたし。
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